出版社内容情報
小説家堀辰雄夫人による、初の語り下ろし。幼少を過ごした香港・広東の生活、青春を謳歌した東京時代、夫、辰雄との軽井沢での出会いから、最期の看取り、その後の今日に至るまでの八十余年に及ぶ追憶の日々。
はじめに
●第一章 誕生・父母・香港
祖父母のこと/父母の結婚/静岡生まれ香港育ち
●第二章 帰国・学校・就職
十歳の帰国子女/加藤家のリベラリズム/寄宿舎の冒険/大の仲良しだった父の死/東京女子大英語専攻部/それぞれの就職事情/夢はお船のスチュワーデス/金谷ホテルの日々/お花の先生の通訳/子爵家の家庭教師/お給料のこと
●第三章 出会い・結婚・献身
堀辰雄との出会い/結婚のこと/結婚の夢……/この人のために/向島での一か月
●第四章 小説家・疎開・別れ
私の人生で一番高いところ/小説家のかたわらで/戦時中の東京生活/堀家の経済/追分疎開/細腕で鍬をふるう日々/三味線の子守歌/養女のこと/昭和二十八年五月二十八日
●第五章 ひとり・思い出・そして今
忙しさが空しさを埋めてくれた日々/湯布院の休日/歳月はあわただしく過ぎて/あらためて結婚指輪/趣味も旅行も/書く仕事/傷を受けることも/心の痛み/病気も成り行き/思い出の家を寄付/自然体のクリスチャン/見送るということ/追分を終の棲家に/いい距離、いい付き合い/そして、私は私……
聞き終えて 堀井 正子
語り終えて 堀 多恵子
……打ち合わせなしの雑談でも、多恵子さんはじつによく覚えている。細やかな生活の一コマ一コマを、誰が、どう言ったというところまでくっきりと記憶している。そして、その数々の思い出がいつも堀辰雄に帰っていく。多恵子さんの人生の出発点は堀辰雄にあるということなのか。もしかしたら、多恵子さんの今は、すべてそこから始まっているのかもしれないと思いつつ、やはりルーツから話していただくことにした。(はじめにより)
ファン必読。夫人の「語り」から生まれる堀辰雄の新鮮な人物像と、堀多恵子という女性の魅力が伝わってきます。