内容説明
第一次世界大戦後、ドイツの大インフレーションを独力で解決し、「経済の天才」と世界の金融界にその名を轟かせた男がいた。ヒャルマー・シャハト。金、人、政治を操った、二十世紀における最大の銀行家。しかし、ヒトラーとの出逢いがシャハトを「ナチの銀行家」へと変貌させる。彼は救世主だったのか?それとも時代が生んだ「悪」だったのか?現代の日本金融界に一石を投じる、衝撃のノンフィクション。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
印度 洋一郎
4
ワイマール共和国期からナチス政権前半にかけて、ライヒスバンク(ドイツ中央銀行)や経済相を務めてドイツの経済政策を主導した人物の評伝。元々やり手のバンカーとして頭角を現し、ワイマール時代ではハイパーインフレを断固とした政策で沈静化し、ドイツを代表する経済人となる。ナチス政権になっても、専門家の手薄なナチスには得難い人材だったらしく、引き続き登用され、ヒトラーも一目置いていた。政治的には保守派で、ユダヤ人政策等のナチスの方針を公然と批判し、やがてナチの経済政策を主導するゲーリングに実権を奪われていく。2023/05/02
ハルバルミチル
0
シャハト先生の生涯。学者肌な人物を想像していたら、国際会議で外相の承諾も得ずにポーランド回廊要求したり、ヤング案が気に食わずに国立銀行総裁を辞めちゃったり、ゲッベルスに嫌がらせしたりと、当時の新聞記者の言葉を借りれば〈嵐のような気性〉の持ち主であったことがうかがえます。ヒトラーに和平を進めたりして挙句収容所送りになったりもしてますし。本人曰く「ドイツ経済のために情熱的に働いたんやで!」とのことですが、言うても越えちゃいけない一線を抑えているあたり、計算高い、したたかな面も垣間見えます。2015/09/27
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