内容説明
恐物、畏怖、妖怪、幽霊、呪い。異界の穴を覗き込むともとの姿には戻れない。闇と癒しの百物語『琉球怪談』シリーズ第四弾、降臨!
目次
其之1 母親は答えなかった(まばたき;アンナとのぞみ ほか)
其之2 バンシルーの女(I hate you;祓えない ほか)
其之3 スップル(スイミングプール;ため息まじりの井戸 ほか)
其之4 わたしのはなし(パヤパヤ;パンを投げる ほか)
著者等紹介
小原猛[コハラタケシ]
作家。昭和43年京都生まれ。カメラマン、ライターとして活動したのち、沖縄移住。沖縄独自の怪談や精神世界、御嶽文化などに興味を持つ。2011年にボーダーインクより『琉球怪談』でデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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HANA
74
沖縄を舞台にした実話怪談。勝手な思い込みだけど、沖縄は我々の生活と異界、此岸と彼岸の距離が短いような気がしている。著者の作品を読むとその二つが共存というか隣り合っていて、白昼妖怪が出ても、先祖の幽霊が出ても、ノロのお告げが出ても、ああそういう事もあるんだな。と日常に溶け合っているように思える。これって死後と断絶した我々と違い、非常に幸福な事じゃなかろうか。特に印象に残った話としては暖かい気持ちになれる表題作にチンアナゴシリーズ、著者が体験した話かな。読んでいて彼岸に触れそうになれる至極の怪談集でした。2020/11/09
眠る山猫屋
50
読み友さんのレビューに惹かれて。あっけらかんとした沖縄の空の下、本土より身近に存在する“見えないもの”。祖先との深い繋がり、海の底から近寄る影、戦争の傷痕を引きずる気配。そして現代的な悲劇の裏側。ユタやノロといった“向こう側”を繋ぐ人々は祓うのではなく、やはり“繋ぐ”のだ。表題作は幼くして死んだ少女のマブイを捜して送る依頼を受けたユタが、少女の死因に至る悲劇を知り、復讐ではなく自然に寄り添うように事件に関わっていく話。結果は想像するだに恐ろしいのだが。度々登場するチンアナゴ(のような)神霊(?)の威容。2021/02/16
あたびー
26
小原猛さんのうちなー怪談本。届いた途端に読みふける。表題の「いまでもグスクで踊っている」は、虐待された女の子の魂が、家に帰りたくないとグスク(城)跡の公園に留まり今でも楽しそうに踊っていると言う心に灯火の灯るような話。ところで、虐待していた両親は、我が子のマブイ(魂)が見当たらないから連れ帰ってほしいとユタさんに頼んだそうだが、なぜマブイがないと分かったのだろう?そして何故虐待死させた娘のマブイに帰ってきて欲しいと思ったのだろう?世間体かな…?2021/01/26
sonettch
19
最後の章名に「わたしのはなし」とあるように、現時点での集大成のような感じがする。サイン本を購入してよかった。いい話が多いが、「久高島のチンアナゴ」がいちばんのお気に入り。「新築祝いのヒージャー」では、その動物が何のために育てられたのか、ということは尊重するべきだと思った。嘘をついてはいけない。2020/08/24
澤水月
15
たくましくおかしく哀しく怖い琉球怪談を存分に。ペット店逸話は爆笑、畳みかけるチンアナゴは怖い。表題作、子供が身内から受ける痛みとその解放のあり方に胸疼く。「ユタ半分、医者半分」な彼我の曖昧さがかの地の特徴と思っていたが旧日本兵に共感で添う例と毅然と対応する例が並んでおり興味深い。ほか返還前後~現在の米兵やコザ、ジュリ=遊女など外国人や歓楽街に絡む秘話が戦後75年の年、久々に地元刊行の本書を彩る。著者自身の逸話…! 奇譚通じ沖縄の歴史を平易に興味深く世に知らせるべく、本土に生まれながら選ばれたのだな(コメ続2020/07/30
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