内容説明
水が涸れ、弾が尽きる…まさに“生き地獄”と化した凄惨な戦場を指揮し、最後まで戦い抜いた栗林中将。米軍の戦死傷者数2万8686名は日本軍2万933名を上回った!世界の戦史上、稀にみる死闘は、東京都内で行われた―どうして、これほどの戦いを省みないのか―。
目次
序章 世界の戦史上、稀にみる死闘は東京都内で行なわれた
第1章 真珠湾奇襲から硫黄島へ
第2章 栗林中将の独創
第3章 硫黄島三六日間の死闘
第4章 現代に生きる硫黄島
終章 硫黄島の戦いにみる日本の伝統主義的社会構造
著者等紹介
小室直樹[コムロナオキ]
政治学者、経済学者。1932年、東京生まれ。京都大学理学部数学科卒業。大阪大学大学院経済学研究科、東京大学大学院法学政治学研究科修了。東京大学法学博士。この間、フルブライト留学生としてアメリカに留学し、ミシガン大学大学院でスーツ博士に計量経済学を、マサチューセッツ工科大学大学院でサムエルソン博士(1970年ノーベル賞)とソロー博士(1987年ノーベル賞)に理論経済学を、ハーバード大学大学院ではアロー博士(1972年ノーベル賞)とクープマンス博士(1975年ノーベル賞)に理論経済学を、スキナー博士に心理学を、パースンズ博士に社会学を、ホマンズ教授に社会心理学を学ぶ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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tamami
53
大東亜戦争末期の硫黄島の戦闘は、戦史に残る大変な激闘であったこと、戦闘の指揮官が栗林忠通中将であったことは予て知る所であったが、本書はその詳細について余すところなく教えてくれる。一方で、硫黄島の戦闘がその後の日米関係に与えた影響の大きさについて、蒙を啓かれる思いで一気に読む。硫黄島の戦闘と原爆投下は、米国の本土決戦を思いとどまらせ、戦争終結を早めると共に、戦後日本の経済的繁栄をもたらしたという、著者小室さんの、正統派の歴史記述の陥穽を突く大胆な仮説は、栗林中将の事蹟と共に、広く知られるべき事柄ではないか。2023/12/29
古本虫がさまよう
4
小室氏は、硫黄島の死闘が、戦後の日本の安全保障体制を決定づけることになったとしている。「硫黄島の戦闘で日本軍が余りにも強いのを見て、アメリカはこんな強敵と戦争するのはもうごめんだと考えた。(略)硫黄島は、人類の戦史の中でかつて例のない果敢な戦いだった。戦後の日本にとってその戦果は非常に大きい。日本の繁栄に大変な功績を齎(もたら)したと言わねばならない。何故なら、この戦いの御蔭を持って本土決戦をせず、戦後の日本に圧倒的に有利な安全保障条約を結び、高度成長の繁栄を招いたからだ。神風はまさに戦後に吹いた」と。 2023/11/28