内容説明
破滅寸前の世界は、どんな居場所も、手がかりも与えてはくれない。そこはLUOES、幻想都市。顔をなくした人々の群れ。ルールを知らないゲームの中を、自力で歩いていく、8つの「私」の物語。騒音から抜けだし、あらたに「発見」したものは―。
著者等紹介
グカ・ハン[グカハン]
1987年韓国生まれ。ソウルで造形芸術を学んだ後、2014年、26歳でパリへ移住。パリ第8大学で文芸創作の修士号を取得。現在は、フランス語で小説を執筆している。翻訳家として、フランス文学作品の韓国語への翻訳も手掛ける(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
NAO
76
8つの話はゆるい感じでつながっている。それらの話の共通点は、疎外感、孤独感、哀しみだろうか。「ルオエス」は、街に砂漠が入りこんだという噂を聞いた「私」が、砂漠を探す。どこに砂漠はあるのかとの問いの答は「そこ、そっち、その辺にごろごろ」。砂漠がその辺にごろごろとは変な言い方だが、ごろごろという言葉で思い浮かぶのは、浮浪者か。行き場をなくし社会から疎外された状況にある浮浪者にとって街は殺伐とした砂漠であり、彼らの存在が街を砂漠にしているのか。ちなみに、ルオエスという街は、ソウル(SEOUL)の逆さ言葉。2020/11/29
tototousenn@超多忙につき、読書冬眠中。
72
☆4.5 一本の煙草の火は家族の気遣いで消せず 放火のつけびが夜尿症のこどもの尿で消される。 不安は砂漠の砂のなかに消え、そして物語が言語と魂との往復のなかで灯る。2020/12/25
キムチ
55
幻想めく呟き。原文は仏語で執筆、一人称の私が一種類しかない仏語から日本語への翻訳は作品の持つイメージを殊更にに際立たせているのではと思った。あとがきに韓国出身の筆者が母国語を使うと想像力の阻害で自由に語れないと述べている。8話で登場する私は年齢、立ち位置不明のアノニマス、固有名詞も出てこない。幻想都市ルオエスから私は国を超え、河を渡り、移動続ける。私は孤独、弱く、年老いていたリ、病んでいたリ、殻を作る事も。無力とも言えそうな情景は実は騒々しいと分かるのが最期の放火狂。初めのルオエスと合体の感覚を持った2025/03/04
そふぃあ
24
孤独や喪失の感覚がひたひたと迫ってくるような空気に満ちている短篇集。 著者は、コミュニケーションをとる相手が多いほどむしろ寂しさを強く感じる人なのではないかと思う。砂漠でひとり、砂の熱を肌に感じている方が満ち足りているような。だから、フランス語が身につき、周りの人々との距離が否応なく近くなりすぎれば、きっと彼はまたどこかへ行くのだろう。孤独から逃げるために孤独でいる。そういう矛盾が成り立つのではないか。2021/05/14
かもめ通信
22
もしかすると人は喧噪の中にいればいるほど、寂しくなるときがあるのかもしれない。 “荷物をまとめようとしていたら、突然、何か重要なものをなくした気持ちに襲われるも、それが何なのかはっきりとはわからずに、何かを置いてきてしまったという感覚をどうしても払拭することができない。” おそらく、誰でもそんな気持ちになることがあるだろう。 でも、そう聞くと、自分もまたなにかをなくしたような気がしてきて、思わず当てもなく身の回りを探してしまう。 そんなあなたに、お薦めの1冊。2020/09/14