内容説明
多くの賞に輝いた『焼肉ドラゴン』を含む通称『在日三部作』を一挙収録!再演を待望される三つの傑作には、在日コリアンである劇作家・鄭義信自らの原風景が色濃く滲む。戦争、困窮、差別…激動の昭和を、もがきながら、それでも笑みを忘れずに歩んだ人々の三つの物語。鶴屋南北戯曲賞、読売演劇大賞・最優秀作品賞、紀伊國屋演劇賞個人賞、朝日舞台芸術賞グランプリ、芸術選奨文部科学大臣賞演劇部門受賞。
著者等紹介
鄭義信[チョンウィシン]
1957年、兵庫県姫路市出身。劇作家、脚本家、演出家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ばんだねいっぺい
28
登場人物たちのどの台詞も切れば本物の真っ赤な血が勢い良く吹き出すように感じられた。女性抜きでは足腰の立たない男の情けなさを申し訳なく思いながら、ドラマに浸った。生の舞台も見れたら嬉しいが、もうやっていないか。鄭さんの戯曲をもっと沢山読みたいし、炭鉱の歴史も知りたい。2017/05/01
坂田 哲朗
2
作者へのインタビューで、ご本人の実家は戦後に荒廃した姫路城の石垣の上に立っていたという記事を目にしたことがありました。伊丹空港脇の国有地に住む在日コリアンの人々の「焼肉ドラゴン」はこの方でなければ書けない物語なのだと思います。「パーマ屋すみれ」は三井三池炭鉱での労働争議と事故でCO中毒になった人々の話。こちらは東日本大震災時の福島原発事故のことが思い起こされます。鄭義信さんが描く話には、いろんな複雑な事情を抱えながらも出会う人々がたくましく行きていこうとすることへの、あたたかい眼差しが感じられます。2017/06/03
シロツメクサ
2
涙が溢れて止まらない。知られていない歴史の事実。2016/04/15
法水
2
今年3作連続上演が予定されている鄭義信さんの戯曲集。「焼肉ドラゴン」のみ再読。「たとえば~」は朝鮮戦争のさなかの九州F県のダンスホール、「焼肉~」は大阪万博前年の関西のホルモン屋、「パーマ屋~」は1960年代半ばの九州の炭鉱町にある理容店が舞台。それぞれ在日朝鮮・韓国人の過酷な生活環境、劣悪な労働環境、様々な苦しみや哀しみを描きながら、登場人物たちはそれでも明日を信じていて、いずれも何かしらの希望を感じさせる終わり方をしているのがいい。九州や関西の言葉で書かれた台詞はついつい声に出して読みたくなるほど。2015/02/06
dubstepwasted
1
在日韓国朝鮮人の庶民の家族の物語。人々が愛し、闘い、憎み合い、抱き合い、一緒に食べた、ある場所を舞台に、群像劇が繰り広げられる。時代の波に常に翻弄され続けても、「きっと明日はいいことある」と言いながら、生きていくしかない。2019/08/25