内容説明
大きな流れに運ばれる、人びとの声。圧倒的な密度でうねりくる、文学体験。すぐ隣には、夜よりも暗くて大きい脅威が、たしかに存在していた。女の子がぎゅっとつかんで放さないものは何か。あの遠くの列車の音は。フェンスに囲われたバラックで、弟妹が目にしたものは。崩れ落ちてくる世界全体を受けとめた、ちいさな者の姿を描き、災厄にくだかれた、生のかけらを掬う。著者のあらたな到達点。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
(C17H26O4)
67
題名もない夜の森を手探りで彷徨ってたどり着くのはどこ。わたしに尋ねた声の主は誰。触れるのは圧倒的な存在感を持つ実体のない何か。支配するのは恐怖とも不安とも違う、寧ろ生々とした闇でできた産着に包まれるような、ねっとりとした甘い温もり。あの大きな音が変えた。何を。記憶たちがとめどなく流した黒い液体は焼く。何を。森で砂漠で瓦礫の街で子宮の中で。夜よりも大きいそれは優しいのだろうか。私たちに?子供たちに?母親に?胎児に?世界に?2019/07/03
いのふみ
2
メルヘンチックなのに、現実で、ちょっとダーク。2017/11/15
Kaname Funakoshi
1
森と柵と親と子と子供達の短編集、あるいは詩集。2023/03/25
ゆうやけPC
1
悪夢の塊のような本だった・・・ゆめにっきの様な2015/06/25
なめこ
1
どこの誰だかも分からない人たちからこぼれ落ちた叫びともささやきとも笑い声とも泣き声ともつかないばらばらのかたまりがおおきな津波のように押し寄せてきて飲み込まれる。不思議なリズムで人を酔わせる描写。そして夜の底の底に引き込まれるような見事な装幀。とてもお気に入りの一冊になった。2015/04/07