感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
buchipanda3
96
穂村さんは42歳の時に緑内障と診断され、20年も治療を続けているのだそうだ。緑内障は現代医学では完治出来ない。そういった病を抱えた著者による自分語りエッセイ。失明の恐れは文筆業への決意になったとのこと。ただ怖いのは恐いと正直に吐露する。自分が死ぬ時にしか治療が成功したか判別できないことから生と死に対する観念的な話も語る、緩やかに。特に父親とフジモトマサルさんの話が印象的。彼らのキチンとした生き方に感銘するも自分には出来ないと素直に他者と違う自分を認めることは、病と共に不安と付き合うのに必要なことに思えた。2025/09/10
レモングラス
88
穂村弘さんが持病の緑内障とその周辺について語られている。眼科の主治医の後藤克博先生と、ご友人の精神科医、春日武彦先生との対談も収録。アランの言葉「われわれは苦しむ以上に恐れるのである」も、紹介され、苦しんだり失敗したりすることよりも不安で恐れることのほうが心の中に占める割合がすごく大きいということも書かれています。後藤先生からは睡眠不足や目の酷使に気をつけるようにとのお話。重い物を持ち上げたり、息を止めるのも視神経の負担になるとのこと。30代の従兄弟が急性の発作で視野が狭くなったことがあり読みました。2025/10/28
ネギっ子gen
78
【緑内障は、自分でできることがほとんどない、完治する見込みがない病気。その不治の病に私はなってしまった……】子どもの頃から目が弱かった著者による、持病である緑内障とその周辺についての本。長年の友人である精神科医・春日武彦との対談「天国に格差はある?」のパートを熱心に読んだ。パーソナリティ障害について春日は、<下手に指摘すると人間性を否定されたように受け取ってしまわれかねませんし、/「治る」という概念が当て嵌まりません。「生きづらさ」といったテーマになってきますから、医療には馴染みにくい部分も多い>、と。⇒2025/11/11
pohcho
62
緑内障をめぐるエッセイ。曽祖母が緑内障で失明、お母様も糖尿で最後は失明。ご自身も小学生の頃から目が悪かった(眼鏡くんと呼ばれていた)穂村さんは42歳で緑内障と診断される。緑内障になって物欲がなくなったり、逆にいろんなことをやってみようという気持ちになったり。さまざまな感慨が綴られていて、独特の哲学的な思考が面白かった。不安感が強いというか、怖がりなところが自分によく似ていて、また、わたし自身強度の近視でもあるので、共感を覚えつつとても興味深く読んだ。2025/10/03
neimu
53
著者については、私にとってはダヴィンチで、軽くて少し付いていき難い若者向けの現代短歌を広く推し進めてしまった人という印象が強かった。(大変失礼だが)なので、病についてこんな風に語るのは少々意外だった。緑内障は私も患っていて、手術もしたし、失明の恐怖についてもよくわかる。左目の視野がまだらに欠けているので、当然何もかも欠けて見える。ただ、この日常を語る相手も少ないし、医者がここまで相談にのってくれる訳でもない。病におびえる日々、自分の弱さを語っても本にはならない。立場が仕事に繋がること自体が恵まれている。2025/11/13




