感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
buchipanda3
95
穂村さんは42歳の時に緑内障と診断され、20年も治療を続けているのだそうだ。緑内障は現代医学では完治出来ない。そういった病を抱えた著者による自分語りエッセイ。失明の恐れは文筆業への決意になったとのこと。ただ怖いのは恐いと正直に吐露する。自分が死ぬ時にしか治療が成功したか判別できないことから生と死に対する観念的な話も語る、緩やかに。特に父親とフジモトマサルさんの話が印象的。彼らのキチンとした生き方に感銘するも自分には出来ないと素直に他者と違う自分を認めることは、病と共に不安と付き合うのに必要なことに思えた。2025/09/10
pohcho
59
緑内障をめぐるエッセイ。曽祖母が緑内障で失明、お母様も糖尿で最後は失明。ご自身も小学生の頃から目が悪かった(眼鏡くんと呼ばれていた)穂村さんは42歳で緑内障と診断される。緑内障になって物欲がなくなったり、逆にいろんなことをやってみようという気持ちになったり。さまざまな感慨が綴られていて、独特の哲学的な思考が面白かった。不安感が強いというか、怖がりなところが自分によく似ていて、また、わたし自身強度の近視でもあるので、共感を覚えつつとても興味深く読んだ。2025/10/03
ひらちゃん
48
完全に治ると言えない病気は確かにあって。自分自身も完治はなく寛解にしかなり得ない病気である。緑内障については失明もあると知り、この本で知った穂村さんの性質からすると向き合う事の難しさも感じ取れる。誰しも健康体でいられればと願うが叶わないのが人。今日を生き延びまた明日を迎えられればよしと割り切りたい(願望)。知ったからなのか、穂村さんの短歌に影響を及ぼしてるんだろうなと思った。2025/08/23
あじ
23
病気に対するとらえ方に法則も縛りもないと、私は思います。生きがいを見い出す人もいれば、心の準備を始める人もいる。肯定も否定も及ばない、一個人の境地だと考えます。緑内障を公表した穂村さんは---でした。診断が下される遥か以前から、そうなるかもと意識し続けていたからかもしれません。裸眼で見るものが本質ではない、眼裏でかたちを変えていくそれをフォーカスする具現歌人へ。脱皮していく可能性を秘めたエッセイだと思いました。2025/10/03
くさてる
19
緑内障という病を抱える歌人でエッセイストの穂村さんの語りと短歌、医師との対談をまとめた一冊。眼科の検診では必ず眼圧を測定するし名前も聞いたことあるけれど、実際に緑内障についてまとまった内容を目にしたのはこれが初めて。穂村さんらしい語りで進行していく病を抱えるということ、生命と死という問題までもがフラットに語られていて、良かったです。2025/10/01