内容説明
アンチ・ミステリを謳い、今なお多くの作家を呪縛しつづける戦後推理小説の白眉『虚無への供物』の作者・中井英夫。この“奇妙な作家”の最期を看取った本多正一が写真と文章で綴る晩年の日々。
目次
プラネタリウムにて
1993年12月10日のあとに(彗星との日々―中井英夫に;1993年12月10日のあとに)
きらめく星座(きらめく星座;一枚の葉書(埴谷雄高さん;武満徹さん ほか))
薔薇の不在(『彗星との日々』のために;「死んだらどこへ行くんだろう」 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
koala-n
2
中井英夫の最後の4年間、住み込みの秘書として接した著者にして書けた本。内容の半分は中井英夫の死後に様々な雑誌などに求められて書いた文章で、残りの半分は著者が撮っていた最晩年の中井英夫の写真。著者の文章と写真で、この審美的かつ神秘的な作家の意外な私生活の様が窺い知れて興味深いと同時に、こんなことを世間に発表しても良いのだろうかと少し当惑させられもする。もちろん著者はそれを承知に上で、「作品」としてこの本を出していて、読んでいる側もそのことはよくわかっているのだが、それでも妙な痛々しさみたいなものを感じた。2013/08/01
宙太郎
1
中井英夫氏の最晩年の4年余を助手として務めた著者の記録。写真も多数掲載されている。中井氏は死の手前数年間、小説も書けず、実社会との乖離がますます進んで、その世話をする著者の苦労は並大抵ではなかったことがひしひしと伝わってくる。そんな中井氏の姿を僕たちが知ることができるのは、ただただ本多氏がこの本を書いてくれたからだ。著者が助手として中井氏の傍にいてくれたこと、そしてその様子を写真と文章で知らせてくれたことに対して心からの感謝を。中井氏が本当にここから永久に去ってしまったことをこの本でようやく実感できた。2023/12/23