内容説明
炭俵一俵、重さは四貫、俵の中には炭焼き人の生活の糧が詰まっている。合計四つの炭俵が括り付けられた背負子の重さは、六十キログラムを超える。健人はこれを一人で背負って二時間の道程を硯島の里まで運ぶ。この山で健人の焼いた炭は、これで最後だった。樋口一葉記念、第二十三回やまなし文学賞受賞作品。
感想・レビュー
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chimako
81
2014年やまなし文学賞受賞作。例年の受賞作と比べてみてリズミカルで読みやすかった。満州開拓団から招集され戦後は地獄のようなシベリアに抑留。4年後ようようの帰国も妻も子どもたちも引き揚げの途中で亡くなり、母親の死に目にも会えなかった不幸。それを背負って炭を焼く仕事に就いていたが、それも時代の流れでお仕舞いにせざるを得なくなった。人手を欲しがる林業の担い手の一人となった健人。田舎の山里暮らしの描写は、県内のことでわかるような気がする。恩賜林関連の仕事も思い当たることがある。県内在住の強み。2020/06/29