内容説明
中世最大の異端、カタリ派の南フランスにおける活動の軌跡を、その社会的背景、教義の具体的内容から「アルビジョア十字軍」の顛末にいたるまで、史料を縦横に駆使して陰影豊かに描き出した名著。図版多数。
目次
序章 聖ベルナールの怒り(呪いの町;信仰の掟 ほか)
第1章 南フランスの風雲(南部の国々;吟遊詩人 ほか)
第2章 異端カタリ派(バルカンの遠き祖たち;異端の書 ほか)
第3章 アルビジョア十字軍(アルビジョア派;ローヌ河畔の惨劇 ほか)
第4章 百合の紋章(フランス人との戦い;ミュレの合戦 ほか)
後日譚
著者等紹介
渡邊昌美[ワタナベマサミ]
1930年岡山県に生まれる。1953年東京大学文学部西洋史学科卒業。高知大学教授、中央大学教授をへて、現在、高知大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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レートー・タト
8
再読。南仏における異端カタリ派の興隆の原因からそれが撲滅されるまでの経緯とその周辺的状況、絶望の教理と言われたその思想の核(二元論)の特徴について、資料・遺跡などを念入りに調査・分析しつつ、平易な文体で説明している。著者・渡邊昌美に特徴的なのは、カタリ派はあくまでもキリスト教の一派(正統からすれば異端)であり、その興隆の舞台となった南仏は、時代に取り残された後進地域であって、カタリ派及び中世南仏がキリスト教とは違う独自の異教文化的な発展をとげたものだとする見解・傾向に反論しているという点である。2011/02/06
shinobu
1
日本ではほとんど語られないアルビジョワ十字軍について詳細に語られた名著。発端はカタリ派と教皇庁の争いだったものが、結局は南フランスと北フランスの文化の衝突であった…というくだりに納得。南仏の優雅で優れた文化が今日まで残っていれば、フランスはどうなっていただろう…と考えずにいられない。2015/12/09
quinutax
0
黒死館を読むとぶつかるアルビ派。南仏の地勢、カタリ派の発生からその宗教観、十字軍による壊滅、トゥールーズのレモン伯について実に丁寧に描かれている。「わたしたち」という語を多用することによって読者を中世世界へ誘ってくれる。直接的な繋がりは肯定されていないが、ツルヴェデール(ツルバール)吟遊詩人の詠う詩が恋愛から女性崇拝へと変わり、騎士が鞘当てとした高貴な女性との関係で、最後の一線を越えない不思議な禁欲主義(裸体で抱き合うだけ)と悲観絶望的なカタリ派の繋がりを説いた部分が実に面白かった。2017/08/04
j1296118
0
南北の特徴(北仏との差異)がじっくり語られた上でのその後の話の展開が飲み込み易い。 救慰礼を受けた後に不幸にして回復してしまう入信者、は悲喜劇のようで実際救済を求めた人にはとてつもない悲劇なんだろうな2016/06/11
ヒラタ
0
カタリ派という異端撲滅のためにおこったはずのアルビジョア十字軍は結果として主従制度確立させれなかった南フランスのひとつの文明を崩壊させフランス王がある意味漁夫の利を得る結果に。私は息子の学校の図書館にあったので読めましたがこのような良い本が普通に手に入らないのは残念。2014/06/06