内容説明
歌人たちの集う華やかな宮廷に嫁した王女が、信仰と慈善に身を捧げたのはなぜか?そして、若くして世を去った彼女が、没後わずか4年にして列聖されたのはなぜか?今なお絶大な人気を誇る聖人の生涯(1207‐1231)と、没後、列聖に至る過程をつぶさに検証、崇敬発展の背景にある聖俗諸勢力の思惑や、発足間もない教皇による列聖制度の詳細に光をあてる労作。アポルダのディートリヒ『聖エリーザベト伝』全訳を併録。
目次
序章
第1部 聖エリーザベトの列聖と崇敬(聖エリーザベトの生涯と崇敬の始まり;列聖審問と教皇グレゴリウス九世の意図)
第2部 聖人伝の中のエリーザベト―ディートリヒ『聖エリーザベト伝』を中心に(アポルダのディートリヒの生涯とその作品;婚姻と忠誠―理想の妻と寡婦として;財と施し―新たなる清貧理念の登場;「聖エリーザベト」の誕生―『聖エリーザベト伝』に見る奇蹟・列聖・崇敬)
終章
補遺 一四世紀以降の聖エリーザベ崇敬
付録 アポルダのディートリヒ『聖エリーザベト伝』全訳
著者等紹介
三浦麻美[ミウラアサミ]
1978年生まれ。中央大学大学院文学研究科西洋史学専攻博士後期課程単位取得退学。博士(史学)。現在は中央大学等非常勤講師。専門は中世ドイツの宗教、文化史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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人生ゴルディアス
5
皇帝に世界を支配させ、世界を支配した皇帝を教会が支配することで世界を支配しようという企てが頓挫しはじめた中世中期以降、教会が民衆との関係を再定義し始める中で、聖人に与えられた役割も変わる。特に第四回ラテラノ公会議で結婚が秘蹟に追加されたことで、既婚者の女性にも列聖への道が開かれた、的な。列聖の審査手続き(必要書類)や、皇帝・聖人の死んだ現地大司教・教皇の厄介な政治的対立故に進まない列聖手続きを、ドイツ騎士修道会が仲立ちして云々とか、とてもよかった。聖遺物容器の写真も多かった。2021/04/07