内容説明
域攻め、平地での会戦、町や村の略奪、野営地での休息…。人びとは何のために武器をとり、また戦火の下で、何を見つめ、何に気を取られていたのだろうか。年代記等の史料がふと漏らす一節に新たな光をあて、城壁の内外での虚々実々の駆け引きから、兵器のディテールに至るまで、中世の戦場の「リアル」な姿を再現してみせる画期的論考。図版多数。
目次
第1章 略奪(兵士―楽しき略奪者;国境での略奪 ほか)
第2章 攻囲(城郭建築の普及と包囲戦という悪夢;西ヨーロッパにおける包囲戦術 ほか)
第3章 会戦(望まれぬ会戦と虚像の勝利;戦場の恐怖 ほか)
第4章 季節と時刻(四季と農作業;過酷な天候 ほか)
第5章 身体(食料;傷と病 ほか)
著者等紹介
セッティア,アルド・A.[セッティア,アルドA.] [Settia,Aldo A.]
イタリアの中世史家。元パヴィーア大学教授。1932年アルブニャーノ(ピエモンテ州)生まれ。専攻は中世イタリアの人口動態史、城郭史、軍事技術史
白幡俊輔[シラハタシュンスケ]
1978年大阪府生まれ。京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程修了。京都大学博士(人間・環境学)。現在、京都造形芸術大学等非常勤講師。専攻は15‐16世紀イタリアの軍事技術史、軍事史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ゲオルギオ・ハーン
29
映画や漫画では中世ヨーロッパの戦争とは激闘という印象だが、実際は正面衝突をできるだけ避け、戦わずに勝つことを至上としていた。具体的にどうするかというと「とても強い軍」に見せることで戦闘隊形は実用的というよりも整然とすること(兵科ごとに並び、前の方に精強な兵士が並ぶ)、規律のある団結力や士気の高さを見せつけることとなる。返り討ちにあうと思わせて退却させるのが最上の勝利だった。また、都市が自前の軍隊を嫌がったのは都市民の生産性の高さから戦争で犠牲にするより傭兵を雇った方が経済的だったという指摘は面白い。2023/08/21
ようはん
17
中世ヨーロッパの戦闘について略奪や攻城戦等幅広く解説し読み応えのある内容で当時の騎士道精神みたいな綺麗事は何処に行ったのかというぐらいに荒々しい中世ヨーロッパの戦場の現実が書かれている。2021/05/04
MUNEKAZ
14
無数の自治都市がしのぎを削ったイタリアを中心に、中世ヨーロッパの「戦争」を紹介した一冊。英雄や戦いの列伝ではなく、戦場に臨んでの兵士たちの心性や略奪の概念、農業との関りなど広範な分野を扱っていて面白い。ただ似たような事例が続くので、ちょっと読んでいてダレる感もあるのがたまに瑕か。日本の中世の戦場とも比べて読んでみると、驚くほど似通ったところもあれば、差異のある部分(攻城兵器の技術や騎兵の地位など)も見えてきて興味を掻き立てられるところである。2020/01/17
彬
10
中世イタリア都市国家をメインに戦争の事柄を取り扱っている。まず初めに取り扱うのが略奪なのだから本の方向性が分かろうというもの。続いて包囲戦、会戦、時季、肉体と記述の範囲が幅広く、資料からの引用も豊富で参考になる。ただ淡々と資料の羅列が続くことも多く、読み終えるのに時間がかかった。2021/12/15
人生ゴルディアス
3
読みづらい……冗長……情報密度が低い……。事例の羅列で正直きつい。膨張した帝国はやがて辺境を防衛することにかかずらうようになり、それもやがてきつくなり内側に城砦が築かれるようになって拡張が止まる。城砦を攻略することは簡単ではなく、それゆえに広い場所での会戦は極端に減った。ローマ時代の攻城戦の知識は一度失われ、十字軍を経由してヨーロッパに還流し、13世紀ころには広まった。等々。情報そのものとしては薄い冊子でも収まったのでは。2020/01/05