内容説明
イタリア語にラテン語・ギリシャ語を混淆させた難解な言語・独特な文体をもって知られる奇書の、原典からの完全訳。世界でもっとも美しい本とも評される原著初版掲載の、趣きある木版画172点を完全収録。他に参考図版も充実。著者をめぐる謎についても、「解説」で詳細に紹介。古代世界についての百科全書的知見をふんだんに鏤め重層的に展開する物語世界理解のための一助として、神話学・錬金術・象徴学・美術史・西洋古典文学・ルネサンス精神史・書物史・印刷史など多岐にわたる関連分野をカバーする、詳細な註・解説を付す。
著者等紹介
コロンナ,フランチェスコ[コロンナ,フランチェスコ] [Colonna,Francesco]
書誌学上、伝統的に『ヒュプネロートマキア・ポリフィリ』の著者名に擬されているが、実名か否かを含めてその実態は不明
大橋喜之[オオハシヨシユキ]
1955年岐阜生まれ。1989年以降ローマ在。錬金術書を読むBlog「ヘルモゲネスを探して」更新中(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あたびー
7
#日本怪奇幻想読者クラブ 膨大な引用と詳細なイメージに圧倒され半分以上すっ飛ばしつつ青息吐息で読み終えた体。澁澤龍彦「胡桃の中の世界」にすがりついてみたら、巨人も拾い読みだと言っていたので、私はそのさらに半分以下をなめた程度か。ストーリーは巻末解説を読むほうが早い。ポリアへの愛に悩むポリフィロは夢の中で広大な森や建造物を巡り、愛するポリア(らしき女性)と巡り合う。この「らしき」のところでまず「は?愛してるのにわからないの?」となるが、これは意味があることだとあとから分かる。(つづく)2019/06/25
渡邊利道
6
澁澤龍彦のエッセイで知られる、15世紀ドミニコ会僧侶が書いたエロティクな愛の寓話。主人公が夢の中で幾多の試練を乗り越えて理想の恋人に巡り合い、語り合うが、朝が来て全て消える。古代的な衣装が次々に現れ、プラトン幾何学的な建築、庭園、劇場や神話的な彫像、怪物や植物群などのさまざまな古代的イメージに溢れかえった世界をほとんど色気違いのニンフら女性たちが舞い乱れる。ものすごく煩雑な象徴の連続で注釈も多く読むのが大変だったがまあ面白かった。二部構成になってる意味とか全然わからんけども。膨大な挿絵がめっちゃ良い。2019/05/01
迦陵頻之急
0
これでもかとばかりの修辞と、百科全書的な古典の引用に埋め尽くされた、異教的な愛の寓意と遍歴、なのだが「ガルガンチュア」の豊かな説話性も、「神曲」の個性溢れる登場人物たちも不在とあって、他人のくどい夢の話を聴かされる気分なしとしない。修辞が多すぎて本筋が見えてこないあたり、何かに似ていると思ったら、これはあれだな、大乗仏典だな。2023/04/08
Ryoma Okamura
0
樹々に鎖された近寄りがたい場所に悲鳴が響き渡るうち、もはや嚙みしめた愕からしゃがれ疲弊し消耗した声が漏れるばかりで、息も絶え絶えの様子。そうこうするうち、獰猛な獣たちがそこにやって来たのです。残酷な死刑執行をおこなう子供は、これら不幸で悲惨な娘たちを長い間かかって血塗れのうちに死刑執行人たちの流儀で引き裂いたのです。彼は燃え上がる山車から降りると、鋭利な剣で苛烈な軛を解き、無慈悲にも無感動な冷淡さで喘ぐ娘たちの心臓を突き刺しました(p.645)。2022/08/31
毒モナカジャンボ
0
すべての修辞が大仰でクドく、それらの意味も古代世界各地の神話や歴史に通じていないと何もわからないという教育本であり、ルネサンス人文主義の自由というものの奔放さがバリバリ出てくる。壮麗な建築と構造物への褒め称え方がほとんどすべて幾何学によっており、本当にキツくなってくるが現代と全く違う世界というのをこれほど見せつけてくるものもない。第二の書からようやく物語感が出てくるがナチュラルに主人公が死んだり蘇ったりしてすごかった。後意外とエッチで、澁澤龍彦がハマったのも頷ける耽美的な支配-服従の構図がぼんやり見える。2021/06/22
-
- 和書
- 不自然な死 創元推理文庫