内容説明
“竜殺し”として名高い聖ゲオルギウスは、なぜ、またいつごろから、聖人界きっての“武闘派”として勇名を馳せるようになったのだろうか?セント・ジョージ(英国)サン・ジョルディ(カタルーニャ)などの呼び名でもおなじみの“闘う聖人”の原像とは?400点の図版とともにキリスト教文化の古層へと迫る刺激的論考。貴重な最古の殉教伝(5世紀頃)の全訳も収録。
目次
第1章 「聖ゲオルギウス国」の誕生(東欧ジョージア;聖ゲオルギウス像 ほか)
第2章 聖ゲオルギウスの竜退治(『黄金伝説』の伝える竜退治;ジョージア版の竜退治 ほか)
第3章 キリストの戦士(第一次十字軍の時代;ヒューフィンゲンの銀盤 ほか)
第4章 聖ゲオルギウスの受難と殉教(『黄金伝説』の殉教伝;最古の殉教伝 ほか)
第5章 殉教伝の歴史的実態(カッパドキアのゲオルギオス;キリスト教徒大迫害 ほか)
著者等紹介
〓橋輝和[タカハシテルカズ]
1944年生まれ、岡山大学名誉教授、博士(文学)。ドイツ・ゲルマン言語文化論専門。1975年ドイツ語学文学振興会奨励賞、2017年日本独文学会賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Bo-he-mian
15
キリスト教圏では聖母マリアの次に有名な竜退治の英雄・聖ゲオルギウス。でも日本では「サン・ジョルディの日」の元ネタの人って事すら知らない人が多いと思う。その「聖ゲオルギウス」が、元々は竜退治とは何の関係もない殉教聖人だったのが、なぜ世界一有名なドラゴンスレイヤーへと変わって行ったのか、を考察する。平易な「です・ます」調の文体で読み易いが、内容は結構マニアック。でもあとがきで著者の方が、伝説の変遷を解りやすく要約しているのを読んで爆笑。いや・・・あとがき最初に読んだら、本編読まなくなっちゃう人いるんじゃね?2018/09/20
OKKO (o▽n)v 終活中
7
図書館 ◆そもそも、ドラゴン、ワイバーン、ヒュドラetc.をきちんとキャラ付けせずに「龍」と訳したところから間違ってる、という某中国美術教授の指摘に目からウロコが飛び出し、龍と名のつく画像をジロジロ眺める日々……たしかに中国語の新約聖書でもヨハネ黙示録に出てくる怪物は「龍」とされてますが……まさかこの誤訳(とあえて言う)&思考停止(とあえて言う)の起源はあのファサードの碑文だったりして(笑) いや、笑ってるけど、じゅうぶんありうる ◆本書はセントジョージあんどthe dragonが中心なんですけど2018/05/16
toiwata
3
聖ゲオルギウスの伝説の由来を龍殺し dragon slayer の属性を与えられる前から辿る。殉教譚に出て来る拷問の描写が残虐きわまりないので、要注意。(人間の知能は他人を苦しめるためにも最大限に発揮されることがあるという実例。) 2017/12/07
拡がる読書会@大阪
2
ゲオルギオスはキリスト教の聖人の一人で、なんとドラゴン退治のお話があるそうです。それを語られるまでの歴史的背景を豊富な資料で解説している本です。竜殺し=ドラゴンスレイヤーと言われる聖人なんですよね。かっこいい。 キリスト教ではヘビはアダムとイヴを貶めた悪の存在ですから、ヘビの存在を大きくしたのがドラゴンへと繋がってるのかなと思ったりしました。辰年本その2 https://note.com/sharebookworld/n/nee05678f99092024/01/23
かおりん
2
本関係のイベントでいまいち盛り上がらないサンジョルディの日って何よ、と思って行き当たった。優しい語り口でスラスラ読んでしまうのだがおそらくたいへんに学術的。私のような浅い読み手には見応えのある博物館のよう。全ページニッチな喜びに溢れ愛蔵に値する。4月は毎年これを読もう。