内容説明
16世紀前半のドイツで活躍したクラーナハは、デューラーと共に「北方ルネサンス」を代表する画家である。宮廷画家として大工房を営み、1000点以上の作品を制作したが、なかでも女性を神話や伝説中の人物に擬えた宮廷人好みのシリーズは一世を風靡したという。また、ルターの宗教改革の宣伝に一役買ったことでも有名である。本書では多才な画家の生涯を概観すると共に、彼が得意とした神話・伝説にまつわる作品群にスポットを当てた。さらに、華麗な衣裳を纏った特徴的な聖人画や宮廷の男女を描いた肖像画から、当時のファッションを読み解くことを試みた。
目次
1 画家の生涯
2 女神と聖女の物語
3 貴族と聖女の宮廷ファッション
著者等紹介
伊藤直子[イトウナオコ]
東京生まれ。東京都立大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得満期退学。現在、国立音楽大学他非常勤講師。専門はドイツ文学、ドイツ文化史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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アキ
101
メトロポリタン美術館展で「パリスの審判」を鑑賞した。約500年前の絵とは思えない程現代的な女性の肢体と、風景描写の精密さを目の当たりにした。デューラーとはほぼ同時代、フリードリヒ賢明王の宮廷画家として工房を開き、自身はカトリックだったが、ルターとの親交から肖像画や聖書のドイツ語訳の出版にも関わった。彼の工房の白眉は、古代の神話や聖書を題材とした裸体の女性像と、ユディットやサロメを題材に当時の貴族の最新ファッションを纏った女性像であり、その繊細さはため息が出る程である。1553年81歳で老衰のため死去。2022/01/30
キムチ
53
他者の既読本で目について。。8年前発刊というから、私が上野へクラーナハを観に行った時の本?今いち既知の方が少ない画家ながら目に焼き付くとモデルの視線残像が妙に残る。手ごろにまとめられた内容で作品写真は小ぶりながら、概ね満足を貰える。16c中盤にかけて独中央部(ザクセン州)を中心とした活動をした。父も画家であり、ほぼ50年宮廷画家として三代ザクセン公に仕えた(ルターとも深い親交があった~世界史の激しい変革点を生き抜いた彼なりの処世術?)①鳥瞰的俯瞰スタイル②不都合なカップル③宗教的神話的テーマ④宮廷の肖像画2024/11/18
Nat
33
北方ルネサンスの一人であるクラーナハの作品がたくさん!カラーで見やすく楽しめた。アダムとエヴァ、ヴィーナスとアモル、ユディトなどテーマごとにまとめられていて、解説もわかりやすかった。ウィーン美術史美術館にある1510年から20年ごろに描かれたアダムとエヴァが好き。また、貴族や聖女の華やかなファッションから、華やかなザクセン地方のファッションを堪能することもできた。2020/08/15
sssakura
28
クラーナハの絵を初めて観た時に感じた言葉が、説明に使われていてにんまり。クラーナハが生きた時代や、彼の人生、宗教画の意味など読み応えがあり、とても面白かった。特にサロメとユディトの違いや、クラーナハの絵におけるサロメとユディトを知れたのは収穫。来年の展覧会が楽しみで仕方ない。2016/10/29
花林糖
19
表紙のユディットに人目惚れし購入。北方ルネサンスの画家の1人で16世紀前半のドイツで活躍。美しいカラー図版・豪華な宮廷衣装にうっとり。「ホロフェルネスの首を持つユディット」「洗礼者聖ヨハネの首を持つサロメ」が特にお気に入り。2021/11/28