内容説明
日本の生態学は進化論とどのように向き合ってきたのだろうか?20世紀後半、「利己的遺伝子」の比喩を掲げ、進化生態学の新パラダイムが形成された。ドーキンス『利己的な遺伝子』の訳者の一人である著者が、同時代に綴った論文を集成し、この小革命への日本の生態学の開国と適応の歴史を振り返る。
目次
1 社会生物学上陸(社会生物学の系譜;自分勝手な遺伝子?? ほか)
2 今西進化論退場へ(今西進化論とダーウィン進化論;今西進化論現象を読む ほか)
3 ひとつの総括(現代日本の生態学における進化理解の転換史)
4 ブックガイド(ナチュラル・ヒストリーと現代進化論;自然ブックガイドベスト10)
5 進化生態学の方法(集団生物学の適応論と遺伝学;卵の大きさはいかに決まるか ほか)
著者等紹介
岸由二[キシユウジ]
慶應義塾大学名誉教授。理学博士。1947年生まれ。1966年横浜市市立大学生物科卒業。1976年東京都立大学理学研究科博士課程単位取得退学。同年、慶應義塾大学生物学教室助手、1981年助教授、1991年教授を経て、2013年定年退職。進化生態学を専攻するとともに、鶴見川流域・三浦半島小網代等を持ち場として、“流域思考”にもとづく防災・多自然都市創出のための理論ならびに実践活動を推進中。国土交通省河川分科会委員、鶴見川流域水委員会委員ほか、国・自治体の各種行政委員を歴任(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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S
4
社会生物学論争や、その前のルイセンコ生物学、今西進化論等、日本において「進化理論」がどう受容されてきたのかを、現場で問題意識を持っていた著者70-80年代に書いたものをまとめたもの。社会生物学論争あたりのことを知りたくて手に取ったが、想定外にタメになった(生物学を超えて、ナショナリズムとか、左翼思想が背景にあるのが明らかで、科学史としても面白い)。流行りすたりという意味では、今でも、内在的には似た問題はあるのだろう。2020/02/01
A.Sakurai
2
進化論は再現試験ができず論理に頼りがちになるなど特有の事情から泥沼化しやすく、政治思想や社会政策に濫用されがちだ。実際に30年ほど前までは日本の生態学では反ダーウィン的なルイセンコ学説、次に今西進化論が主流だった。80年代半ばに標準的なダーウィン流になる。この展開を著者は小革命と呼んでいる。著者はその転換の担い手の一人で、本書は当時の関連論考をまとめたもの。科学的でない仮説が政治や思潮に乗って幅をきかしてしまう、その実例がついこの前まであったし、同じようなトンデモは今でもある。2020/05/06
takao
0
ふむ2025/05/12
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