内容説明
海外で高い評価を受けている日本の春画は、今でも国内ではまったくの「異端」扱いが続いている。「春画=ポルノ」と誤解され、まっとうな評価さえ受けていない。こうした現状に疑問を持ち、長年地道な春画研究を続けてきた著者は、実は春画が「遊び絵」「笑い絵」として粋な江戸人の間で受け入れられていたことを鋭く指摘する。西欧近代の性意識に影響された日本人の「猥褻概念」を排してみれば、そこには名だたる浮世絵師たちが「絵とことば」を駆使して表現する、遊び心を交えた独特な「江戸人の性愛」の世界が見えてくる。
目次
春画はポルノグラフィか?
第1部 性愛の図像学(絵とことばが一体化した世界;なぜ性器を大きく描くのか?;エクスタシーの瞬間へのこだわり;なぜ乳房に無関心なのか?;多彩な性愛のヴァリエーション―色事百般なんでもあり)
第2部 江戸人の性風俗(江戸の女と若衆狂い;性愛を演出する最新ファッション;都市風俗としての“夜這い”;色を売る―江戸の遊里考)
著者等紹介
白倉敬彦[シラクラヨシヒコ]
1940年北海道生まれ。早稲田大学文学部中退。長らく美術書編集(現代美術から浮世絵まで)に従事、現在に到る
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感想・レビュー
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幹事検定1級
23
江戸時代の美術作品として世界からの評価も高くコレクターも多いのが春画。その春画の世界をまるで大学の講義や教科書を読んでるかのように真面目に奥深く解説していただいております。本自体はモノクロですので挿絵の本当の色づかいはわかりませんが、当時はその後、文化的な価値が高まることはそれほど想像されなかったでしょうが、現代では美術価値として大変なものになっているのでしょう。2018/03/01
ユウユウ
4
江戸の粋2025/04/20
澤水月
2
「片手で読む絵」すなわち自慰用の絵だとの論へのアンサー本だったもよう。「笑い絵」→「わ印」ともいうように「笑」の要素が重要であった点や、縁起物/呪物として上層階級の嫁入り道具だったことを明かして行く。春画において女性の欲望の対象になるのが成人男性でなく前髪/振り袖の若衆であり女性の表象を帯びた両性存在だとの指摘は昨今の「男の娘」ブームと併せて考えても実に面白い2010/01/24
Mariyudu
1
先週のタモリ倶楽部が面白かったので、そーいやウチにそんな本あったなと引っ張り出して読んだ。期待とはちょっと違っていて、「春画の見方・楽しみ方」ではなく、春画というフレームを通して当時の性風俗ひいては民衆の性へのアティテュードを考察する、多分に社会学・民俗学的な本かも。現代の腐女子・既腐人的な位相の嗜好が既に確立されていて割と大手を振っていたというのはワロタ。そういや鈴木春信って絵師は、現代の漫画(高野文子とか?)と通じるテイストがあってイイですねぇw #ツレアイ蔵書活用シリーズ2020/09/22
富士さん
1
再読。岡田コウというエロマンガ家さんは、ショタからはじめてロリに至った方だそうで、初めて知ったときは不思議な経歴だなぁ、と思いましたが、本書を読んでありがちなことなのかもしれないと思い至ました。ここではいろいろと刺激的な論が展開されていますが、一番興味を抱いたのは、当時男にも女にも愛されいていたのが女のような男であったという話です。それは女のような男のような女も生み出して、性器以外の性差は限りなく混沌としていきます。でも、性的な志向というのはそれが普通だと開き直ってしまえば、それでいいのだと思うのです。 2015/06/09