内容説明
鴎外をドストエフスキーから照射し、漱石文学の軌跡を駆け抜け、芥川文学の詩心の行方を探る!近代文学の三つの高峯に挑む。
目次
1 鴎外・ドストエフスキー・漱石(鴎外とドストエフスキー―『灰燼』と『悪霊』の関係を中心に;『明暗』のリアリズム―その人物造型の特質について)
2 三人の女物語―美禰子・信子・菜穂子という系譜(「三人の女」の系譜について;『三四郎』(夏目漱石)の美禰子
『秋』(芥川龍之介)の信子
『菜穂子』(堀辰雄)の菜穂子)
3 鴎外・漱石・芥川(鴎外史伝の始動―歴史と小説のあいだ;漱石文学の軌跡―『吾輩は猫である』から『明暗』まで;芥川文学の構図―断章的展望の試み)
感想・レビュー
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syota
26
鷗外、漱石、芥川に関する著者の講演や評論が収録されている。特に漱石について得るところが多かった。『明暗』に関する考察など唸ってしまうほど鮮やかで、自分の読み方がいかに浅かったか痛感させられた。『三四郎』の美禰子を「めざめて間もない近代の知性にうながされながら、それだけに迷い多くその青春を生きた女」として捉え、堀辰雄の『菜穂子』に通じるものがあるとする指摘にも意表を付かれた。また、末尾に収録された『漱石文学の軌跡』『芥川文学の構図』はそれぞれ30頁ほどだが、単なる作品紹介の域を超えて作家の本質に迫った力作。2016/12/03