内容説明
横浜市中区本牧にある三溪園は、生糸貿易で財を成した原三溪(富太郎)が、自邸を開放した庭園である。園内には、各地から移築された多種多様な建築物が散りばめられ、「建築の博物館」とも評されている。原三溪は、古美術の収集や近代日本画家の育成に重要な役割を果たしたことはよく知られているが、建築に対しても高い見識をもっていた。本書は、明治三十九年(一九〇六)の開園以来一〇〇年を過ぎた今、忘れかけられた三溪園の建築物の、歴史と価値や移築の経緯などを紹介し、園内を散策しながら、それぞれの建築の鑑賞へと誘う。
目次
建築と庭の交響曲
旧天瑞寺寿塔覆堂―秀吉ゆかりの建築
旧東慶寺仏殿―鎌倉から来た建築
旧燈明寺三重塔―三溪園のシンボル
天授院―養祖父の持仏堂として
臨春閣その一―数寄屋風書院の名品
臨春閣その二―前身は春日出新田の会所
蓮華院・春草盧と月華殿・金毛窟―茶人三溪のもてなし
聴秋閣―奇想の建築
御門・白雲邸・松風閣―三溪の住空間
旧矢箆家住宅と旧燈明寺本堂―三溪の心を受け継いだ移築
鶴翔閣―復元された三溪自邸
著者等紹介
西和夫[ニシカズオ]
1938年東京都生まれ。東京工業大学大学院博士課程修了。工学博士。現在、神奈川大学名誉教授。専門は日本建築史。山形県長井市・岐阜県各務原市・佐賀県唐津市など、各地の歴史を活かした町づくりに携わり、松江城調査研究委員会委員長なども務める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ホンドテン
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図書館で、年始から度々借りだしてようやく読了。建築博物館的な横浜本牧名所の庭園と個別の建築群の歴史と概説。どの建築も国重文、市文指定を受けおり、よくぞ移築保存し(特に東慶寺仏殿や燈明寺本堂など)一部分とはいえ戦前には一般開放されたと感じ入る。一方で形成した三渓が信じていた来歴とは実際には大きな乖離があったのも語られるー聚楽第や紀州巌出御殿とされたが実際は大阪会所建築だった臨春閣など。個人的に面白かったのは奇態な聴秋閣の来歴、稲葉家藩邸所在で現渋谷区青山、度々自転車で廻ったので昔日からの変貌を痛感。2022/03/27