内容説明
石仏は、路傍や寺社の境内で眼にすることができる、きわめて身近な存在である。その多くは、近世の庶民によって造立された信仰にかかわる遺品であり、記録には、ほとんどとどめられることのなかった彼らの精神的営みの片鱗を伝えている。本書は、近世前期に普遍化した山王社や庚申供養塔をはじめ、後期の相模国に特有な地神塔などを、その背景となったさまざまな信仰や、社会構造の変化に対応させて捉え、近世庶民の精神風土を、多様な造形表現をもつ、おびただしい数量の石造物のなかに見出そうとするものである。
目次
序章 近世石仏の出現
第1章 宗教信仰と石仏(神々の勧請;塚と石塔;祖先の供養と墓塔;庚申供養塔)
第2章 農民と石仏(地域社会と石仏;現世利益への志向;作神信仰と石仏)