内容説明
実存思想は客観的真理や体系的世界観と対立する。その対立は、真の客観性や体系性が歪められることに対する主体的人間の側からの抗議である。思想が客観性の名のもとに傍観者的にあつかわれることへの対決を実存が迫るのである。人間が置き去りにされたありかたに対して、各人それぞれの生活のなかで意義をもてるように観察や思考がおこなわれることをそれは要求する。実存思想はそれゆえ思弁的観想的でなく行動的生活的であり、客観的認識の分野を単独の人間の全体性のなかで回復し、単独者がそれによって生きかつ死にうるような理念を認めたばあいにその真理を単独者に生きさせるエネルギー源をそなえる思想である。
目次
調律のために
1 実存と理性と気分―人間のあり方のしるしとしての気分(理性的把握の限界性;実存的かかわりにおける主体性;実存的かかわりにおける理性;契機としての理性;存在全体のしるしとしての気分;ネガティオンとしての気分;日常性の破れ;気分の訴えるもの)
2 生と知の主体への問い(実存と現実性;対自関係と対他・対世界関係;不可知の全体と実存的気分;限界状況と実存的自由)
3 自由な生のための覚え書(生成における人間とその思想;単独者の主体的現実性)
附録1 哲学者と哲学研究者
附録2 実存の哲学的問題提起について
著者等紹介
飯島宗享[イイジマムネタカ]
1920年長崎県生まれ。1942年東京帝国大学卒業。1987年没迄東洋大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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