内容説明
未完の大作“フランス組曲”同様イレーヌの死後60年にわたって鞄に眠り続けていた作品だが完成作としては最後の作品。粛粛と巡る水車小屋で突然起こった惨劇。一つ一つ明かされてゆく秘密―「血の熱」は若者たちを何処に駆り立てるのか!?
著者等紹介
ミネロフスキー,イレーヌ[ミネロフスキー,イレーヌ] [N´emirovsky,Ir`ene]
1903~1942。ロシア帝国キエフ生まれ。革命時パリに亡命。1929年「ダヴィッド・ゴルデル」で文壇デビュー。大評判を呼び、アンリ・ド・レニエらから絶賛を浴びた。このデビュー作はジュリアン・デュヴィヴィエによって映画化、第一回トーキー作品でもある。34年、ナチスドイツの侵攻によりユダヤ人迫害が強まり、以降、危機の中で長篇小説を次々に執筆するも、42年にアウシュヴィッツ収容所にて死去
芝盛行[シバモリユキ]
1950年生まれ。早稲田大学第一文学部卒(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
巨峰
76
作者の経歴をいったん頭から外してこの小説は読まれるべきだと思う。メロドラマです。大きな秘密とそこから繋がる展開に翻弄された。血の熱は、大部分は地中の中に埋もれているが途切れることなく熱く燃えて居る。そしてある瞬間地表に現われるのだ。まるで血液のように赤く。枯れたようなフランスの田舎の村であっても、人がいる限り血の熱は潜んでいる。100ページ少しの作品だけどなかなか濃厚で読み応えがあった。2017/12/17
キムチ
54
筆者のルックスから入って行く読書はないが、裏表紙の画像を見るだけでパッション50%は頂ける。薄い1冊だが、じわじわっとくる恐れ戦きは半端ない。日本でもある「田舎ののどかな風景に潜む戦慄」ってやつ。舞台が非日常的な風景だ?とはいえ100年前の仏、近代という世相・・人も自然も眠ったような中で、薄目を空けて人を貶めんとはかりごとだらけ。のどかさはかけらもない。血縁地縁の粘つくいやらしさがお好きな向きにはうってつけ。お初筆者だけにそそられた。「完成作」としては遺構とあるがさもあらん。並みのペンでは書けないね。2018/01/09
星落秋風五丈原
49
仲良しの夫婦フランソアとエレーヌ・エラール夫妻と娘コレットと婚約者ジャン・ドラン、そしてエレーヌのいとこシルヴェストルが食後談笑。「自分達も親のような夫婦になりたい」と語るコレット。絵にかいたような幸せな家族図は、この後崩れ始める。エレーヌの父は再婚し、継母は彼女に辛くあたったが、義姉セシルは優しくしてくれた。セシルが引き取った孤児ブリジット・ドゥクロは歳の離れたケチな夫がいながら、若いマルク・オーネと親し気に踊る姿が目撃されていた。ジャンはコレットに彼女と付き合ってほしくないと言う。2016/06/04
やいっち
33
読ませる作品。負のマトリョーシカのような世界。フランスの片田舎の村が舞台。顔見知りの人ばかり。誰彼の素性や人間関係も知悉している。澱んだ空気が息苦しい。今日も明日も同じような日が続く……はずだった、ある死亡事故が起きるまでは。それは実は殺人事件だった。村人たちは、なかった、何も見なかったことにし、平穏な暮らしが続くはずだった。が、2019/02/05
燃えつきた棒
32
ずっと前から僕は「血の熱」を、厄介で飼い馴らすべきものと思っていた。 そんなものよりE・E・スミスのSFに出てくる「純粋知性体」の方がよっぽど好ましかった。 だが、今では人は孤独や死から逃れられないように、「血の熱」に翻弄され続けるしかないような気がする。 たぶん「純粋知性体」すらも。 2016/11/04
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