著者等紹介
ギンツブルグ,ナタリーア[ギンツブルグ,ナタリーア] [Ginzburg,Natalia]
イタリアの小説家、劇作家。1916年、パレルモ生まれ。38年、レオーネ・ギンツブルグと結婚。40年、アブルッツォ州のピッツォリに流刑となった夫に従う。ここで第三子誕生。42年、第一作『町へ行く道』。44年、夫獄死。エイナウディ出版社入社。50年、英文学者ガブリエーレ・バルディーニと結婚。63年自伝小説『ある家族の会話』でストレーガ賞受賞。83年、独立左派の下院議員に選出。91年、ローマの自宅で死去
望月紀子[モチズキノリコ]
東京外国語大学フランス科卒業。イタリア文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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りつこ
32
個性的で共感しにくい登場人物に、息継ぎも許さないような文章に苦労しながら読んだ。弁護士の仕事を辞め暴露本的な回顧録を書く反ファシズム派の父。暴君のような父に押さえつけられている子どもたち。そして祖母の代から家にいる乳母。前半はこの一家が父を失うまでが描かれ、後半は戦争に巻き込まれていく彼らの姿が描かれる。主人公のアンナは家族に忘れられているような影の薄い少女。意志がないようにひたすら受身のアンナや身勝手で攻撃的な他の登場人物にイライラさせられたが、最後まで読むと不思議な充実感が残る。2015/03/16
ぞしま
11
ナタリア・ギンズブルグの初期(1952)の長篇作品。母型の家系を基に戦中の家族とその周囲の人間を描く。作中の突飛な設定もそうなのだが、三人称がもどかしく、著者の魅力はやはりあの置いてけばりにされたような一人称にあるのだと得心する。もっとも著者も「三人称でなくてはとても書けなかった」と言っていたようなので、時間が必要だったということなのだろう。ここから10年以上の時を経て『ある家族の会話』にたどり着くのか、と考えると感慨深い。レオーネもパヴェーゼもかなり直接的に作品に投影されているように見える。2020/10/18
belle
8
カーテンで作ったような服を着た少女にとって革命とは、バリケードにのぼって銃を撃つこと。改行は少なくびっしり詰まった文字から、戦争とファシズムの時代の重苦しさが立ち上がる。ひたすらページをめくった。登場人物たちのすべての昨日を描いた先のラストの数行が心に響く。2018/06/14
Mana
4
ナタリア・ギンズブルグの新作(新訳?)で2014年の発行。須賀敦子さんの訳で少し読んだことがあるきりで、昔の人だから新しく訳されるとは思っていなかったので驚き(最近何かあった?)。第二次大戦中のイタリアで反ファシスト一家の末娘アンナが主人公。このアンナがひたすら受身なんだけど、時代背景が時代背景だからそれでも物語は劇的に展開する。劇的に展開しつつも作風はひたすら平坦な感じで、前に読んだある家族の会話と似ている。時代背景も同じなんだけど、あっちは一人称でこっちは三人称(後書きを読むまで気づかなかった。)2015/12/22
いっこ
3
エッセイ『小さな美徳』の時には読みにくいと感じた文体が、この小説ではなくてはならない要素に感じられた。 訥々と語られる登場人物たちと革命、愛、戦争。人間は弱くて強いと、改めて思い知らされた。当初は怪しげな雰囲気で登場したチェンツオ・レーナの生きざまが、まさにそうだった。北イタリアの絵はがきの行商人のことが出てきて、『モンテレッジオ 小さな村の旅する本屋の物語』とつながった。2018/11/24