内容説明
プーシキンの後を追い時代精神の把握、民衆の歴史的役割の認識、国民的文学の創造を目指してゴーゴリが達成した長篇歴史小説の傑作。
著者等紹介
ゴーゴリ,ニコライ[ゴーゴリ,ニコライ] [Гоголь,Николай Васильевич]
1809年ウクライナ生まれ。代表作に故郷ウクライナを題材とした「ジカニカ近郷夜話」「ミールゴロト」など、ペテルブルクを題材とした「外套」「鼻」「検察官」などがある。1852年自らの断食により死去
福岡星児[フクオカセイジ]
1926~2003。神戸市生まれ。北海道大学名誉教授。ウクライナ・キエフ大学に日本人として初めて留学。ポーランド文学にも造詣が深かった(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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燃えつきた棒
38
この物語は、子供の頃、小学館の『少年少女世界の名作文学33 -ソビエト編1』に収録されていたのを、楽しく読んだ記憶がある。作者がゴーゴリだったことも、『外とう』が収録されていたことも、すっかり忘れていたが。 今回手に取ったのは、ウクライナ情勢が緊迫の度を深める中、この物語がウクライナのコサックの話だったのを思い出したのと、ゴーゴリがウクライナ生まれの作家だということを知ったからだ。 残念ながら、今回は、読んでいる間様々な思いが胸中に渦巻いてしまい、子供の頃のように無邪気に楽しむことはできなかった。/2022/02/10
syaori
25
「何と勇壮なザポロージエのコサックたち!」という感嘆がこの作品の印象を言い尽くしていると思います。ウクライナの雄大な自然を背景に、歴戦の勇士ブーリバをはじめとするコサックとポーランドとの争いが描かれます。ポーランド貴族の令嬢とブーリバの息子との恋などもありますが、それよりも命知らずのコサックたちの生きざまが素晴らしいです。酔っ払って城攻めに失敗したりするところもご愛嬌で憎めません。『鼻』や『狂人日記』とは印象の違うゴーゴリが楽しめる本です。とりあえず令嬢はあっさり貴族と結婚しているんじゃないかと思います。2016/05/07
gtn
19
両親の子への愛情の対比。父、ブーリバは神学校を卒業し、帰省したばかりの子を戦場に誘う。いち早く、生きた学問を学ばせたかったのだろう。仲間への自慢も垣間見えるが。一方母は、息子の無事を祈るばかり。父の愛情は、息子も、そして自らも自縛する。息子に訪れる悲劇。そして最後は己も。ブーリバは、ウクライナのコサックであり、正教徒。一方、「神も聖書も異教徒どもをこらしめよと命じているぞ」との彼の言葉のとおり、タタール人、トルコ人等異教徒との交わりはない。露・ウ戦争と重なる。宗教戦争は限りがない。2025/02/16
T. Tokunaga
5
みんな目を背けているが、帝国主義と植民地主義は肯定できなくても、それに圧殺された文化も、必ずしもわれわれの視点から肯定できるものではない。ウクライナ正教のコサックは、ポーランド系王朝の属民の扱いを受け、蹶起するが、彼らもまた残虐と酷薄、血塗られた歴史を隠しはしないのだ。隊長タラース・ブーリバ、愛ゆえに裏切りをはたらく、息子アンドレイのような個人、共同体のために誇らしく死ぬ息子オスタップ、そのような諸相は、文字通り鷲の餌食となり、火で焼かれる。ポストコロニアリズムの裏側には、彼らがいるのだ。2025/04/13
mejiro
5
コサックや戦争に興味ないのに、物語の力にぐいぐい引っ張られて一気に読んだ。伝説や神話を読む感覚に似ていた。善悪を超えた語りがこの感覚をよびおこすのかも。この形の物語をつくれたのは、著者の周到な筆と才能あってこそだと思う。 挿絵も興味深い。未知谷は意欲的でおもしろい出版社だと思った。 2015/01/02
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