内容説明
『東海の謎』に続く長篇探偵小説第一弾にして最終作。一度として作品年譜にも載らず、埋もれていた“幻の作品”。熱海行きの「花嫁列車」から始まるトラベル・ミステリー。現存する銀座資生堂パーラー、上海ヤマトホテルなど様々な名所もさりげなく織り込まれ、鉄道、自動車、船、飛行機など当時最新の交通機関や、昭和初期東京の都市文化へのこだわりも…。時刻表や電話を使った秀逸なトリック、麻酔剤、犯人の変装、警視庁に叩きつけられる挑戦状、少年たちの活躍―。国枝の長篇作品には珍しく、破綻のない、最後まで先の読めない正統派都市型探偵小説の充分楽しめる傑作。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
スターライト
5
新婚旅行先で殺された親友の謎を追う新聞記者が、その犯人と思われる「影なき男」とその一味と対決する探偵小説。新聞連載されただけあって、ジェットコースターのように次々と見せ場がやってきて、息つく暇もない。鉄道や電話をつかったトリック、気化した麻酔薬で犯行を重ねる「影なき男」、そして次々と失踪していく登場人物…。最後は上海まで舞台は移り、主人公である新聞記者の活躍で見事大団円を迎える。瑕疵もなくはないが、昭和の初めの風俗も描かれていて充分楽しめるエンタテインメント作品。2016/03/11
飛鳥栄司@がんサバイバー
3
『神州纐纈城』以来の国枝史郎。作品説明を読む限りでは、かなりの謎解き要素が入った探偵小説かと思いきや、謎解き部分は殆ど皆無。序盤の殺人事件と影なき男との関係はいかにという軸に、影なき男は誰なのかへ移行して、最後は海外での大捕り物という大胆なストーリー展開は国枝史郎ならではだと思う。戦前の街の雰囲気も感じることができ、大衆感あふれる作品に仕上がっている。惜しいのは、解説にもある通り、主人公や刑事の直感と閃きで謎が解かれているために説得力にかける部分が多分にあるところか。列車も事件とあまり関係ないもんなぁ。2013/11/07
よだみな
0
いつも青空文庫で読むような本でしたが、評判がいいので読んでみた。久生十蘭の『魔都』のような劇場型エンタテイメントであった。2016/02/07
にゃー
0
こういうのが好きってことは江戸川乱歩読めばいいのかなー 中盤の展開が熱かった2019/12/23