内容説明
スパイにならないか?アラビア語の能力と地中海風の風貌を買われ、スカウトされたシチリア生まれの男。潜入したムスリム・コミュニティに溢れるイスラーム的日常。友人にも美人にも出会う生活は順調だが…。俺は何を探ってるんだ?テロ・友情・恋愛・離婚に国家の思惑が絡み合う快作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
rinakko
16
“狂想曲”というのがぴったり、こちらも面白かった! 舞台はローマ。チュニジア人になりすました実はシチリア生まれの男(スカウトされてスパイ活動中)と、ムスリム移民で秘かな夢を抱く既婚の女(元々夫を愛してはいない)とが、交互に語り手となる章立てだ。ソフィアの章で詳らかにされるムスリムの結婚の実態(純潔の重みとか、女性にとって監督権が父親から夫へ移行するだけ…エトセトラ)には憤ったが、物語全体は明るくて暗澹とさせられないところが好きだ。イーサーのシチリア弁が大阪弁に置き換えて訳されているのもいちいち可笑しい。2016/05/26
きゅー
11
イーサーとソフィアの交互に語り手となる。ミステリ的な主軸がありつつもチュニジア、エジプト、セネガルなどイスラム圏からの移民(不法移民も)の細かい生活描写に見とれてしまう。そして何よりも語り口の軽妙さ(イーサーの本音部分は関西弁)が愉快。『あほな、「祖国」やら「戦争」やら、なんちゅーけったいな言葉や! 俺にどないせえと?』本来なら深刻なはずの移民問題が日常生活の話題レベルまで落とし込まれているように感じられ、違和感がプラスに転じられている。これはチャレンジングな試みだったろうが、本書では成功している。2013/04/26
nina
9
イタリア語で執筆活動を行うアルジェリア出身の著者の作品らしく、ローマで移民として生活するムスリムの人々の暮らしぶりと地元イタリア人との交流が、それぞれのコミュニティを代表する人物のモノローグで交互に語られる。イタリア側の主人公イーサーはシチリア出身の青年で、アラビア語に堪能なことからローマに潜伏する過激イスラム組織への潜入スパイを命じられチュニジア人に化けているという設定。任侠系の呼びかけである「チュニジアの」に萌え。しかしシチリア訛りを大阪弁で表現するのは微妙。中途半端な幕引きで恋の行方も気になる。2014/07/01
きりぱい
7
面白かった。シチリア人だけれどアラブ系になりきれる男がチュニジア人としてムスリム移民の生活に潜入。一瞬どこの話なのか忘れそうだけれど舞台はローマ。交互に語るのは、エジプトから移民してきたのにムスリムの慣習からなかなか逃れられない女性。この二人はもしかして・・なんて予想するのにそんなひとくくりに簡単なオチではないサプライズが待っていた。生娘にはうるさいのに離婚して元さやに納まるには変な決まり事があったり、ムスリムの伝統、ジェンダー観の違い、移民事情と、重いはずのテーマが機知にとんだ軽やかさで読ませる。2014/04/30
茎わかめろん
5
面白かった。アラビア語の堪能さと風貌でローマのイスラム移民のスパイ活動することになったシチリアの兄ちゃんと、故郷のエジプトから抜け出す為に結婚した若妻。内からと外からみたそのコミュニティを軽妙な語りで描いていく。ちょっと上っ滑りな感じもあるけど2つの物語の展開は楽しくてちょっとした驚きも待っているというか・・・2012/12/25