内容説明
病床にあって死神と競う様に疾走した2年、才能の突然の開花。“廃墟の文学”と呼ばれ人の不安そして絶望と偉大さを描いた作品群。ダダやシュールレアリスムの後継新表現主義の文学空間。
目次
『たんぽぽ』より(「囚われ人たち」;「途上にて」;「都会、都会―天と地の間にたたずむ母」)
『この火曜日に』より(「雪の中に、清らかな雪の中に」;「そしてどこへ行くか誰もしらない」)
『遺稿集』より
著者等紹介
ボルヒェルト,ヴォルフガング[ボルヒェルト,ヴォルフガング][Borchert,Wolfgang]
1921年ハンブルク生まれ。新表現主義の息吹を感じさせる新鮮な作風、掌編小説の名手で第二次大戦後の「廃墟の文学」代表者。15歳から詩を書き始め、書店販売員を経て俳優として舞台に立つが、20歳で召集。1942年左手負傷と黄疸のため、野戦病院に送られる。兵役拒否の自傷行為との嫌疑を受け、軍法会議で死刑を求刑され3ヶ月の独房生活を送る。帰還後の2年間ほとんど病床にありながら、やつぎばやに執筆。代表作に詩集『街灯、夜と星』、散文集『たんぽぽ』
鈴木芳子[スズキヨシコ]
1987年早稲田大学大学院文学研究科修士課程修了。ドイツ文学専攻・翻訳家。1999年ゲーテ・エッセイコンクール受賞(ドイツ語)。『ベビュカン』で2004年度M・ダウテンダイ(日独翻訳)賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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鷹図
7
未知谷といえばロードレース関連の読み物で有名だけど、こんなニッチな海外文学シリーズを出していたとは!著者は掌編小説の名手とのことだが、詩人から出発した点を含め、どうしても散文詩的な印象を受けた。派手な修辞は一切なく、執拗ともいえる反復表現と対比の強調により、言葉のイメージに両義性を与える手腕、時折見せる簡潔な抒情などが読みどころか。解説によると世界各国に熱烈な読者がいるとのことだけど、それは作品そのものよりも、著者が反ナチスを標榜し、それに殉じるような最期を遂げたという点に、大いに依るところがあると思う。2012/03/21
きゅー
6
カバーには「ダダやシュールレアリスムの後継」とあるが、独房の中で自分に向かって話しかける男といった泥臭く角張った主題が選ばれている。それにしても読むのにひどく苦労した一冊。同じ一つの出来事を言葉を重ね、あるいは言葉を少しずつずらしながらくり返し語りかけてくる。そのリズムがあまりに無骨でどうしても視線が前へ進まない。前半は面白みの薄い作品が多かったが、後半はその無骨な文体ゆえの肉感的な物語が収録されている。形式的にはシュールレアリスム的な雰囲気を感じるが、軽やかなところは微塵もなく、重く気だるい様子。2013/03/26
キヨム
0
若さをかんじた2018/05/10