内容説明
あ、また時間に捕まえられる、と思った。
捕まえられるままに、しておいた。
小説家のわたし、離婚と手術を経たアン、そして作詞家のカズ。
カリフォルニアのアパートメンツで子ども時代を過ごした友人たちは、
半世紀ほどの後、東京で再会した。
積み重なった時間、経験、恋の思い出。
それぞれの人生が、あらたに交わり、移ろっていく。
じわり、たゆたうように心に届く大人の愛の物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
243
川上 弘美は、新作中心に読んでいる作家です。 本書は、私小説的なショートショート集でした。 表題作は、何かと思っていたら、そのまんまでした(笑) 本当にアメリカの安い牛肉は固いです🍗🍗🍗 https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=00003780912023/09/17
fwhd8325
132
まさに川上ワールド。小説でありながら、ご自身の日常を綴られているものと思います。私は「センセイの鞄」で川上さんを読むようになったのですが、時を経て、その延長にあるように感じました。2023/11/11
tamami
118
何とも形容の仕様がない「小説」を読んだ。決して悪印象ではないのだけれども、いやそもそも各作品の印象がはっきりとした像を結んでこないのだ。縁取りのない絵が、「私」と周囲の人々との会話を通して浮かび上がってくる。何十年か昔、アメリカはカリフォルニアの地で共に過ごした私と仲間たちが繰り広げたごく些細な日常の記憶と、現在の日本における彼らとの交友の様子が描かれる、と言ったらよいのだろうか。文芸誌に数年にわたって不定期に連載された作品を一本にまとめたもの。鬼才、川上弘美さんの手のひらの上で、楽しくも踊らされる一冊。2023/09/19
ちゃちゃ
108
ふわふわと時や場をたゆたうように描かれる三人の関係。幼い頃カリフォルニアで共に過ごした記憶と、長い時を経て再会したコロナ禍中の現在が交錯する。60代半ば、世間では高齢者と呼ばれる年代になっても、人は重ねた歳だけ分別を身につけるわけではない。むしろはっきりした関係性で相手を縛り合うた若い頃とは異なり、気の向くままに会い互いを慮るような、男と女を枠を超えたゆるやかな繋がりがあってもいい。「よるべない心持ち」を重ねあわせるような朝見とカズの会話が沁みる。老いて、とりとめもなく過ぎゆく日常は、それ故に尊く切ない。2024/02/08
nonpono
80
帰国子女という言葉を聞いたのは中学生のとき。帰国子女を多く受けいれる女子校だった。目の前にいる現実の帰国子女は強気で芯がある女の子が多かった。本書は異国で出会った3人が再会して飲んで語るお話である。離婚を経てどこか達観している3人。何か起こりそうで表面的には起こらない凪のような世界。男と女の友情なんて陳腐なことは思わないがそんなの関係ない。ただ好きなものをそれぞれ頼み、好きな酒を手酌で飲むなんて大人だ。飲み方に名著「センセイの鞄」を思い出す。揺らがない世界。そしてコロナ渦。だけど何か艶を感じるそんなお話。2024/01/05