内容説明
散文活動とは何か、その「しるべ」と評された詩人力溢れる『リュヴェルスの少女時代』に続く20世紀を代表する抒情詩人パステルナークの散文小説。一九一四年七月、炎暑の土埃り舞うモスクワ弱き人々に共有の「こころもとなさ」に共振する青年セリョージャの「幻想」の挫折と現実の日常回帰。「それがこの世の何であれ、憎むことよりも愛することの方が、はるかに容易で固有だったあの最後の夏」それぞれ個人に語りかける、革命前夜の物語―。
著者等紹介
パステルナーク,ボリース[パステルナーク,ボリース][Пастернак,Борис]
1890‐1960。画家である父と音楽家である母との間に生れ、幼少時からトルストイ、リルケ等多数の芸術家に囲まれて育った。1922年の第三詩集『わが妹人生』で著名詩人となる。1958年ノーベル文学賞拝受
工藤正廣[クドウマサヒロ]
1943年青森県黒石生まれ。北海道大学卒。現在同大学名誉教授。ロシア文学者・詩人(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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橘
7
革命前夜の不安な情景とは裏腹に、文字は意味の軛から解き放たれて、表現者の思うがままだ。なんと自由な言葉たち!難解な文章に尻込みすることはない。ただ彼の人間らしさに笑い、憤慨し、感傷的になればいい。本文と同じ量の解説も素晴らしいが、表紙の麗しさも比類ない。2016/12/25
黒豆
7
1916年に、1914年夏の出来事を夢に見る入れ小型の物語。ロシア革命を控えた炎暑のモスクワで、愛する女達は雲となり、夕暮れとなり、横町と一体化する。擬人化と擬人化の逆が多用される詩のような小説だった。「憎むことよりも愛することの方が容易だった最後の夏」にセリョージャの壮大な夢は潰えて、すさまじい雷雨に浄化されたモスクワを夜汽車で去っていく。60ページにわたる謎解き(誰かと誰かの対談形式になっている解説)を読み、ようやく話の筋が理解できた。難解だが、内容も装丁も美しい本。2015/07/03
kozawa
2
美しい。短編で本書には物語を追いかけての詳細な解説がついていて、ちゃんと読み解いた人にはうっとうしそうな、でも私のようなヘタレ読者には参考になってしまうそんな解説つき。ohロシア2010/09/17
mikeneko
0
仕事で必要なので読んだけれど、これほどまでに難解で理解するのが難しい本は初めて。2019/06/02