内容説明
‘ネコのヤン’シリーズ第二作は「草原の祝祭」。ヤンはこの物語で、モスクワから北ロシアのオネガを結ぶ一本の鉄路を旅する。その目的とは…?作者の分身‘名無しのロマンチスト’が、ヤンの謎を追い求め北ロシアの旅に出る。そして、詩的で哲学的なヤンと動物たちが創り出した‘ある象徴’とは…それは人間社会の想像力をはるかに超えたものであった。「草原の祝祭」は、ヤンのシリーズ中、最もロマンティックな作品と言えるだろう。
著者等紹介
町田純[マチダジュン]
1993年より1996年まで東京渋谷に、トルコの国際都市イスタンブール郊外にある歴史的な「カフェ・ピエール・ロティ」の雰囲気と、黒海に面した帝政ロシアの南の玄関口オデッサのイメージを重ね合わせたカフェOdessa‐istanbul「オデッサ・イスタンブール」を開く(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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mocha
84
広大な草原に佇む小さな樅の木。てっぺんに星を飾ればそこは宇宙の中心となって、星々も雪も時間も樅の木の周りを巡り始める…。細やかな情景描写は詩のように美しく、会話は哲学的。主人公がねこなのは、人間を客観的に描くためだろうか。欲望など超越した猫はチェーホフさえもやり込める。革命前夜のロシアが背景となっていて、全体を仄暗い空気が包む。「何ものも見ようとしない目だけが、永遠を見ることができるんだ」かわいらしい表紙に騙されてはいけない。深い思索を要求する本だった。2020/02/19
(C17H26O4)
69
ヤンの世界からずっと戻って来られないでいる。ふと気付くと思考は茫漠たる世界を流離っている。涯まで永遠に続く、どこか寂しい景色だ。草原の、冬の、春の、夏の、秋の。ヤンのクリスマスツリーがぽつんと立っている。しっかりと宇宙を背負いこみ、星団の傘になって。ヤンのその小さなツリーを中心として、全宇宙の星は静かに瞬く。<ああ、この刻だ> 過去も未来も現在ももはやなく、一瞬のときそのものだけが在る。西田哲学とか禅とかクリシュナムルティが頭に浮かんだ。2022/12/05
ワッピー
36
【寅年にネコ本を読もう】参加本。ロシアの大草原の小屋に暮らすネコのヤンはときおり丘を下って汽車にのり、さびしい町・サヴィンスキーを訪れる。町を彷徨うヤンの前に現れる人々、町中どこにでも現れるドブネズミ、うらぶれたミヤマガラス。クリスマスを控え、みなが自分のモミの木を手に入れる中で、ヤンは草原の中にぽつんと立つ幼いモミの木を見いだす。ヤンが卵と蜂蜜から作ったゴーゴル・モーゴルの甘さに憧れを感じつつ、草原の真ん中に立つクリスマスツリーの物語のほろ苦さを、よくわからないながら味わいました。再読でも難しい・・・。2022/05/15
belle
9
今年のクリスマス本祭りはネコのヤンと一緒に終わった。ロシアの大地に伸びる一本の鉄路。走る列車に自在に乗り降りするヤン。目指すヨールカ=樅の木は草原に立つ。星や月やベルをその身に飾りながら宗教も何かも超えて、宇宙に向けて光る樅の木。直立するヤンは変わらず。文章と挿絵のマッチングに今回も心静かにページをめくる。浪漫に感傷も添えて。2018/12/26
timeturner
6
ロシアの草原で暮らす猫のヤンが経験するクリスマス。味わいのある挿絵のせいだけではなく、イメージ喚起力の強い文章によって脳内に絵が生まれ、映画の場面のように目の前を流れ、強く記憶に残る不思議な読み心地。2019/12/18