内容説明
人を愛すことのできる女性、その可愛い女の典型として描かれた主人公オーレンカ。トルストイをして「素晴しい大作家だ」と四日も続けて朗読させた真珠の如き作品。
著者等紹介
チェーホフ,アントン・P.[チェーホフ,アントンP.]
1860‐1904。庶民の子として生まれ、中学の頃から苦学を重ねた。モスクワ大学医学部在学中も家計を助けるため、ユーモラスな短篇を多数の雑誌に発表。社会的関心も高く、結核を養いつつ社会活動や多彩な創作を展開した
児島宏子[コジマヒロコ]
映画、音楽分野の通訳、翻訳、執筆に広く活躍。日本絵本賞ほか受賞
デェミードヴァ,ナターリャ[デェミードヴァ,ナターリャ][Демидова,Наталия]
カザン市生れ。舞台美術をカザンの美術学校で学ぶ。1980年、国立モスクワ映画大学(当時は全ソ映画大学)美術学科に入学。レフ・ミリチン教授の工房に所属。1987年、同大学を卒業し、サユースムリトフィルム美術部に就職。現在は本の装幀を多く手がける(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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にゃおんある
33
オリガさんは本当に可愛い女で飽き足らない不思議ちゃんで、愛された男は仕合せにも不幸に見舞われてしまう。そんなこんなの遍歴を繰り返しながら、やっぱり満面笑み輝かせながらお喋りする場面が愛しさをさそうから、最期までオリガさんらしくあってほしい。こんなに無垢で純真な人、いそうでいない、ある意味天使と言えると思う。2018/01/09
Miyoshi Hirotaka
28
「可愛い」といっても、アイドル系ではない。惚れっぽく、献身的で思慮に欠けるが憎めないという意味だ。自我も教養もない恋愛依存症のヒロイン。惚れた相手とすぐに一体化する。不運にも、二人の夫と死別。尽くす相手がいないと生気までなくなる。ところが、切替えと変わり身の早さは妻子ある3人目でも発揮される。正妻に嫉妬もせず、自宅の離れを提供し、ずっと母であったかのように子供の教育に魂を捧げる。「可愛い」はこのような生き方への皮肉だろうが、肯定もされている。どう読むか、誰を思い起こすかは、時代と読者の年齢により変化する。2014/06/27
星落秋風五丈原
26
オーレンカは、八等官の父親に愛し愛されて育つ。成長して後、チヴォリ遊園地の経営者で、劇団の指導者クーキンと結婚。彼の言うことを、まるで自分が考えているかのように、他人と話す。クーキンが病死し慰めに来た材木商と結婚。すると、今度は彼の考えに同化し、あれほど好きだった舞台への関心も薄れる。ちょっと好き嫌いがわかれそうなキャラクター、オーレンカ登場。ああきっと男性陣から見ればかわいいんだろうなぁ。一心に自分の言うことを聞いてくれて、自分の好きなものを好きといってくれて。でもそれで本人楽しいの?と思ったりする。 2025/05/01
那由多
18
オーレンカは良く言えば相手に寄り添う、悪く言えば主体性がない人物で、付き合ってる側から見たら可愛い女なんだろう。でも良い意味でも悪い意味でも共感性の高い彼女には、粘着質な気持ち悪さと言うか怖さを感じる。アンティークぽさを出した装丁が良かった。2024/10/23
Miyoshi Hirotaka
12
若い頃、ワーレンカがなぜ可愛いのかわからずに読み飛ばした。ワーレンカは かいがいしく尽くすのだが、最初の夫、次の夫は不幸に見舞われ、内縁の妻、継 母として子供の教育に尽くす。「何かが起こっても、何も起こらない」淡々とした展開。どこに問題があって何が起きたのかは、子供の寝言で明かされる。これに気がついた時、「ドキッ」とする。年と共に理解が深まる一作である。2012/03/01