内容説明
1902年、27歳の青年詩人リルケは、パリに62歳の巨匠ロダンを訪ねる。『ロダン論』執筆のためである。同時にそれは、創作の絶頂期にいるロダンに会い、その作品の森に分け入り、おのれの芸術論を構築するためでもあった。ロダンとの交流は、見事な「論説」「講演」として結実して、彫刻家ロダンの本質を捉える。またその十年余に亘るロダンへの「書簡」は、彫刻家の風貌を活き活きと伝えるとともに、リルケの傑作『マルテの手記』等を書き上げる時期とも重なって、青年詩人とその妻である若き彫刻家クララ・ヴェストホフの横顔を見せる。20世紀初頭の芸術の場と時代を写し、「創作すること」の意味を問い、巨匠彫刻家と後の大詩人の希有な交わりのすべてを明かす。図版40点と初訳ロダン宛て書簡全95通を収録。
目次
第1部 論説(一九〇二年)
第2部 講演(一九〇七年)
第3部 ロダンへの書簡(一九〇二年‐一九一三年)
著者等紹介
塚越敏[ツカゴシサトシ]
ドイツ文学。慶応義塾大学名誉教授・日本翻訳家協会理事
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Y.Yokota
4
リルケはロダン論を書くためにパリへ赴き、ロダンのもとに滞在したり芸術観を共有するなどして存分に収穫を得た。その過程や、滞在中の秘書雑務でリルケが「孤独」を感じる暇もなく辛い思いをしたこと、ロダンの早とちりで追い出された後も丁寧にロダンに連絡をとってしたことなどは、後半の書簡に詳しい。そして前半の論説と講演を収めた文章、リルケはなぜこうも平易な文章で様々なことを語ることが出来るのか。理解できない言葉が一つも無いにも関わらず、語られる言葉以上の奥深くまで潜って行くような感覚だ。それを再確認出来る本だった。2020/11/05
garnet_05
3
詩人リルケによるロダン論。論説と講演の二部構成。本著には約10年間に及ぶロダン宛の書簡(95通)も合わせて収録されている。リルケの芸術観を知る上で重要。2013/08/03
247
2
ロダンの作品への熱意がリルケの側から伝わってくる。ただ見るのではなく、全方位から見ることの偉大さが伝わってきた。ロダンの作品、リルケの芸術論が分かる一冊。生きると感じるときは、働いているとき。これはとても共感した。書簡の部分のリルケの熱意と過激なほど詩的な表現から徐々に変わりつつある2人の関係性も垣間見え、面白かった。2021/06/09