内容説明
大空襲で廃墟となったハンブルク、その何もない寂寥とした風景のなかで、ひとり虚無の深淵の淵に佇むノサック。ノサックは孤独な人間の究極の姿と愛を、モノローグとメルヘンのなかに見つめる。静謐な内面独白の積み重ねのうちに、ノサックが描き上げる世界は、人間存在と分かち難くある悲歌であり、それはまた大いなる人間賛歌となっている。「孤独な輝きを放つ宝玉」と評されたノサックの短篇世界がここにある。現代文学の深い慰藉がここにある。
著者等紹介
ノサック,ハンス・エーリヒ[ノサック,ハンスエーリヒ][Nossack,Hans Erich]
1901年北ドイツのハンブルク生まれ。戦前から詩や劇を書いていたが発表の機会がなく、各種の職を転々とした後、父の経営する貿易会社で働き、後にはその経営に携わる。1956年から専業の作家として活躍。1961年、ビューヒナー賞を受賞して評価を確立する。戦後ドイツを代表する作家の一人であり、日本語を含む多くの言語に作品が翻訳されている。1977年ハンブルクにて没
香月恵里[カツキエリ]
1961年福岡県生まれ。西南学院大学、岡山大学を経て関西学院大学大学院文学研究科博士後期課程(ドイツ文学専攻)単位取得退学。専門は現代ドイツ文学。1993年から岡山商科大学商学部講師
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