著者等紹介
横島昇[ヨコシマノボル]
1953年、京都生まれ。京都外国語大学英米語学科卒業同大学院修士課程修了
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感想・レビュー
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藤月はな(灯れ松明の火)
71
皆川博子さんの『辺境図書館』で知ることができた郡虎彦氏による戯曲集。イスラエルを舞台にした二つの戯曲は旧約聖書を知っていれば、より一層、楽しめたんだろうな・・・。しかし、両方を読んでもダビデはトンでもない屑だと思わざるを得ない。「義朝記」はシェイクスピア作品のような徐々にうねりを増すドラマ性に息を呑んだ。特に無情に駆けていく運命に翻弄され、信念を踏みにじられ、家族をも喪うも敢然と佇つ義朝の姿に圧倒される。一番、のめり込んだのは「鉄輪」の先妻。呪詛の言葉を読んでいた時、私の顔も般若のようになっていたそうです2017/11/30
いやしの本棚
13
道成寺、鉄輪、義朝記、どれも暗さ救いのなさがたいへん好み。親王アブサロムはケルトのデアドラ伝説を彷彿させるなと思ったら、訳者あとがきによればイエイツのデアドラを最初に邦訳したのは郡虎彦だったとか。ユルスナールが『とどめの一撃』の序文で、悲劇を成り立たせるためには時間的もしくは空間的に、読者から遠く隔たっている事柄を扱う必要があるというようなことを言っていたけど、郡虎彦の戯曲はまさにその要件を満たしているし、登場人物の葛藤を描写しないことで「内在する高貴さ」が伝わってくる。とても面白かった。2017/05/15