内容説明
明治の末頃、ある少年が、北陸・金沢の冬の夜に祖母が語ってくれた、武士の家庭に伝えられた昔話を記録した。その手書きの本が『冬夜物語』である。加賀方言が豊かに盛られた本文を翻刻し、丁寧にわかりやすく解説。金沢の市井にのこされた昔話やわらべ唄、となえ言葉、諺などをまとめ、かつての人々の心にあった物語世界を再現。そこに立ち現れる時代や風俗、人々の暮らしを読み解く。
目次
第1部 天保生れのおばあさんの昔話『冬夜物語』(なまけ者の話;意地悪婆の報い;えっとこ ほか)
第2部 明治生れのおばあさんの昔話(四十雀カラカラカラ;かかみせどころ;ちょうずを回せ ほか)
第3部 金沢の暮し・ならわし・わらべ唄など(明治のわらべ唄・はやり唄・となえ言葉など;金沢の風習、しきたり;明治の暮し。学校・遊び・食べ物その他 ほか)
第4部 文久生れのおじいさんの日記から(明治・大正時代の珍しかった「もの」たち)
著者等紹介
鈴木雅子[スズキマサコ]
1928年東京生まれ。旧制東京大学文学部卒。石川郷土史学会会員。江戸時代の言葉を研究する一方、故郷金沢に伝わる昔話や加賀方言などを丹念に掘り起こし、郷土史に力を注ぐ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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井月 奎(いづき けい)
26
語り継がれてきた物語を主にした本で、物語は『猿蟹合戦』や『寿限無』などの変形というか原型のような感触で、良く言えば素朴、悪く言えば完成度が低いのですが、その話がなぜ語られるのかが素朴がゆえに垣間見ることができて、物語の必要と必然も感じることができて、野趣あふれるなかに、はっとするようなきらめきもまれに表れるのです。人間の好みや知恵だけで物語は命を保つのではないのかもしれません。その土地や気候風土に合っているのかもしれないし、氏神様に愛でられているのもしれません。お話し、物語、言葉の不思議を見る思いです。2015/11/07