内容説明
悪いことはしてはダメ!―のはずなのに、犯人の最後のことばに、みんなびっくり!善悪では割り切れない、人間の本質にドキリとする。権威や役職に惑わされず、犯人を見破ったのは子どもたち。「毒」なるものをユーモアにつつみこんで描き出した、賢治童話の深淵がかいま見える異色の傑作。
著者等紹介
山村浩二[ヤマムラコウジ]
1964年、愛知県名古屋市生まれ。東京造形大学絵画科卒業。多彩な技法で短編アニメーションを制作。米アカデミー賞短編アニメーション部門にノミネートされた『頭山』をはじめ、『カフカ 田舎医者』などがあり、アニメーション作品における国際的な受賞は150を越える。絵本作品に、第六五回小学館児童出版文化賞を受賞した『ちいさなおおきなき』(作・夢枕獏 小学館)があり、挿絵の分野でも活躍。東京藝術大学大学院教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヒラP@ehon.gohon
26
ハッキリ言うと、宮沢賢治がこの作品に何をこめたかったのかよくわからないのですが、山村浩二さんの絵で、毒気のある喜劇としてまとまっています。 法を遵守させなければっけない警察署長が、どうして大罪を犯して死刑にまでなるのでしょう。 しかもあっけらかんと、罪を認めるのでしょう。 ちょっと以上に嫌な作品ではあります。 町民を感服させたという最後の一言が、妙に残りました。2023/02/10
マツユキ
20
久し振りに、ミキハウスで、宮沢賢治。タイトルに、え!?と思って読んで、読み終わって、またえ!?山村浩二さんの絵もインパクトがあります。最後まで立派な署長さん。悪いと思っても、やめられないのは、誰もが身に覚えがあるからか。怖い。2022/12/17
遠い日
17
これは隠れた名作ではないでしょうか。どこともしれない架空の国の架空の街を舞台に繰り広げられる人間の業がさせる仕業。役職や建前を超えて、どうしようもなくのめり込んでしまう自分の本性にずぶずぶと溺れていく背徳の悦び。もはや隠す必要がなくなった時、真正のことばを吐く快感。この署長さんの譲れない部分に恐怖を覚えるとともに、人間の持つ逃れようのない悪を認めざるを得ないのかもしれないとも思いました。読み終えて背筋がぞくぞくしました。2022/11/21
kameyomi
15
教えて頂き感謝。署長さんの絵がゾクゾクする。毒もみというのは、かつて世界中で、多少内容は違えど漁の方法として用いられていたが、やがて環境破壊の側面から禁止されたそうだ。 だが禁止されるのは賢治がいた時代のずっと後の事で、毒もみ万歳の時代に、この「禁止されている毒もみをして処刑される署長さんの物語」を書いた賢治はやはりすごい。署長さんの最後のサイコな言葉に、何故みんながすっかり感服するのかがこの作品のテーマだ。自分達が日々常識人として抑えているものを見事に無視した者に対する畏れだろうか。2024/02/22
lonely_jean
5
怖い、怖すぎる。教訓がわからん等、いろいろな感想が徐々に湧いてくるが、何よりもまず、怖い。人間とは怖ろしいものなのだ。人間が、というか、文字通り、中毒が、というか。でも中毒はそれほど特別なことではない。毎日コーヒーを飲み、毎週馬券を買う私もきっとそうだろう。とりあえず身を滅ぼさない程度にしよう。2023/05/08