内容説明
『約婚指輪をあげますよ』シグナルは星空を見上げてシグナレスに云いました。『環状星雲ですよ。あの光の輪ね、あれを受け取って下さい、僕のまごころです』。
著者等紹介
山口マオ[ヤマグチマオ]
1958年千葉県千倉町(現・南房総市)生まれ。東京造形大学絵画科卒業。1987年に「ザ・チョイス年度賞」、1991年に「年鑑日本のイラストレーション新人賞」、1993年に「ニューヨークADC賞」「ロンドン国際広告賞」、2002年に「アジア絵本原画ビエンナーレ佳作賞」を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ヒラP@ehon.gohon
31
軽便鉄道といえば、レール幅が一般鉄道より狭い鉄道ですね。 近くにありながら、レールの接点を持てない信号機の恋物語です。 動くことのできない信号機のの恋は、ある意味プラトニックでもあり、精神論的でもあります。 幾多の逆境を乗り越えた恋の成就にはうっとりしましたが、後半のページの文章の多さには、ビックリしました。 信号機の擬人化された絵に、山口マオさんの苦労も感じた絵本です。2022/03/11
クラムボン
21
冒頭の歌がとても良い。これぞ賢治の世界。軽便鉄道の一番列車が東から歌いながらやって来る。ここは花巻駅、東北本線と岩手軽便鉄道の分岐駅だ。現在はJR釜石線として太平洋まで通じるが当時は中間の遠野駅までだった。本線の信号機がシグナル、支線がシグナレス、お互いが惹かれ合っているのだが、賢治は本線と支線の格差を際立たせる。本線シグナル付きの電信柱などは最たるもので、シグナルを若様と呼び、シグナレスとは身分違いだと訴える。山口マオの絵はキャラ立ちした絵が楽しいのだが、重要な星空の描き方が幼すぎて不満を感じる。2023/03/26
南
16
絵本だけど恋愛物語でした。静かな夜や霧、だんだん朝になっていく情景が、読んでいて落ち着くところでした。自分が結婚する前のことも思い出しました。今は子どもがいて賑やかで、主人のことだけを考えることってほとんどないですが、こういうときもあったなぁ、と。2023/11/19
ソラーレ
15
美しく、素敵な話だった。 鉄道信号機(シグナル、シグナレス)を擬人化。シグナルは男性。シグナレスは女性。恋愛物。近くに配置されている2人は恋をする。しかし、お互いに信号機であるため2人はそばに寄ることができない。2人は美しい星や月を見てお互いの気持ちを伝えあう。 遂には宇宙を舞台とした空想の世界で2人は肩を寄せ合う。2022/08/26
Cinejazz
12
〝軽便鉄道の一番列車が来ます。 白い腕木を上げて列車の通過を見送る <シグナル柱>と<シグナレス柱>は、大の仲良しコンビです・・・「貴女はきっと、私の未来の妻だ」 「ええ、そうよ。あたし決して変わらないわ」「婚約指輪をあげますよ。 そらね、あすこの四つならんだ青い星ね」シグナルは星空を見上げて、シグナレスに云いました。「あの一番下の脚もとに、小さな環が見えるでしょう。環状星雲(フィッシュマウスネピュラです。あの光の環、あれを受け取って下さい。僕の真心です」・・・〟宮沢賢治の想像を超えた夢世界です。2024/01/09