内容説明
「にいさま、あのトマトどうしてあんなに光るんでしょうね。」「黄金だよ。黄金だからあんなに光るんだ。」―ふたりだけで、まるでおとぎ話のように愉快に暮らす、幼い兄と妹。ところがある日、彼らの無垢な心は、思いもかけないかたちで傷つけられた…。「かあいそうだよ。ほんとうにかあいそうだ…。」蜂雀の声が波のように聞こえてくる。いつまでも、いつまでも…。
著者等紹介
降矢なな[フリヤナナ]
1961年、東京生まれ。絵本作家。スロバキアのブラチスラバ美術大学の版画科において、画家ドゥシャン・カーライ教授のもとで石版画を学ぶ。その後、本のイラストレーション、版画、絵画を制作し、絵本をはじめ、児童文学の挿絵などを手がける。1985年に、絵本『めきらもっきらどおんどん』(長谷川摂子/作 福音館書店)でデビュー。スロバキア在住(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
MI
85
ペムペルとネルの幼い兄妹がいた。ガラス絵のはちどりが語る兄妹の話。宮沢賢治の世界をみることができた。物語を読んで最後に黄色いトマトの意味を考えた。面白かった。2023/12/07
はる
71
切ない物語。でも好きだな。幼さゆえの悲しい出来事なのですが、それを宮沢賢治はとても抒情的に描いています。降矢ななさんの絵もこの作品にぴったり。安房直子さんの世界観を彷彿とさせますね。ふたりの兄妹の想いは、誰もが自分の幼い頃の経験と重なるものではないでしょうか。2022/08/10
とよぽん
50
読友さんの感想を読んで。町の博物館の蜂雀が語る、幼い兄妹ペムペルとネリの切ないお話だった。子どもに読んで聞かせるには何か素敵なフォローを用意する必要がありそう。降矢ななさんの絵がとても美しく、兄妹の生活や気持ちを巧みに表現している。結構いくつもの外来語が出てきて、賢治の博学を感じた。博物館十六等官キュステの小さかったときのこととして記されている。箱の中に箱がある、みたいな構成。黄色のトマトが幸せを運んでくるのかと思いきや・・・。2022/08/15
gtn
29
私にも子が二人いるが、世間との関わりが増えるにつれ、自分たちが思っているほど親は大したことがないと知らされたときが、きっとあったはず。2021/06/17
Cinejazz
23
〝私の町の博物館の、大きなガラス戸棚にいる剥製の蜂雀の声が波のように聞こえてくる・・・「かあいそうだよ。本当にかあいそうなことをした」・・・ペムペルとネリの兄妹が、まるでお伽話のように愉快に暮らしていたある日。 「兄さま、あのトマトどうしてあんなに光るんでしょうね」「黄金だよ。黄金だからあんなに光るんだ」 二人の無垢な心は、思いもかけないかたちで傷つけられることに・・・〟宮沢賢治・作、降矢なな・絵による、愛しさと切なさがただよう、哀しみの絵本。2024/01/09