出版社内容情報
今世紀中「最もキリストに似た人物」と言われ、全インド、東洋また西洋に巡回し多大の感化を与えたキリスト教の伝道師「スンダル・シング」の著作集がこの度発刊されます。
スンダル・シング(1889-1929)は、インドの三大精神的巨人(タゴール、ガンジー)の一人に数えられる。インドの最も素晴らしい精神と新約聖書の信仰の結晶がここにある! キリスト教をインド人らしく表現し、その教えは単純にしてしかも深く、霊的真理を開示する。精神的に荒廃しつつある今の時代に、最も大切な心の糧を提供してくれます。
キリストと共なる生活
豊かな生命
十字架は天である
訳者あとがき
本シリーズの著者については、先にその伝記『インドの聖者 スンダル・シング』を刊行した。著者の生涯の仔細はそれをご覧いただきたい。
著者を一言で紹介すれば、これは伝記の訳者あとがきにも書いたことだが、二十世紀のインドが生んだ「インド精神と新約聖書(キリスト教)の結晶である」。日本では昭和初期に、金井為一郎牧師によってスンダル・シングの著者が数々翻訳されて日本のキリスト教界に紹介された。現在はその出版物は絶版であり、一般のクリスチャンの間でスンダル・シングが神秘家としてしか理解されないためか、その存在はほとんど無視されている。大変に残念に思う。
著者スンダル・シング自身は専門の文筆家ではなく、神学などの専門家でもない。一人の忠実なキリストの僕として、キリストを伝えるためにインド、チベット、アジア、欧米に伝道活動をした托鉢(サドゥ)伝道者であった。行動の人である。しかし、ヒマラヤの奥地まで徒歩で伝道するなど、身体を酷使するその歩みはついに健康を損ない、余儀なく隠遁生活を強いられた。そのような中から、執筆による伝道を始めたのである。かえって、そのお陰で貴重な書物が残された。今もスンダル・シングの著作を読む人々は、キリスト教の真の信仰が何であるかを東洋人の心を通して教えられ、深い霊的な真理に導かれる幸いを得るのである。
さて、本シリーズでは、スンダル・シングの主な著作を三巻にわたって刊行する予定である。それぞれの著作集には、収録の単行本の序やまえがきにおいて執筆の意図や背景が詳しく書かれているので、ここでは読者の便宜のために簡単に触れておきたい。
本巻の最初の『主の足もとにてAt the Master's Feet』は、一九二一年にウルドゥー語で出版され、英語版は翌年出版された。ウルドゥー語から英語に翻訳したのは、著者の友人であったパーカー宣教師夫妻である。パーカー夫人は、著者の伝記『サドゥ・スンダル・シング 神に召されて』を書いた人だが、スンダル・シングとの間に深い愛情に支えられた交友が生涯続いていた。それだけに、『主の足もとにて』は著者の心を十分にくんで英訳されたものである。スンダル・シングの信仰精神の核心を伝える代表的な著作と言えよう。本書は著者三一、二歳の時の作品であるが、一五歳の回心の時以来、キリストに従うことを決意し、キリストを伝えるためには苦難を喜んで背負い、活動の傍ら、祈りと瞑想をもって神と直に交わる努力を続けた霊的生活の中に啓示された真理の数々である。
二番目の『実在と宗教Reality and Religion』は一九二三年に発行された。初版の原稿を通読したオックスフォードの神学者ストリーター主教が次のように書いている。「わたしが原稿でこの本を読んだとき、わたしの心を打ったのは描写の明快さであった。神や人間、自然についての思想は学問的知識のある人びとにさえ説明するのに困難を覚えるものだが、それらがこの本ではもっとも素朴な人びとにも直ちにわかるような方法で表現されているのである」と。
本書は、ヒマラヤを仰ぐシムラ丘陵のスバツーの家で、伝記の作者で友人のアパサミー博士の助けを得てウルドゥー語の原書から英訳されたものである。
三番目の『霊界の黙示Visions of the Spiritual World』は一九二四年に出版された。この書は、ある意味で特異な本である。なぜなら、われわれにとっては死後の世界である霊界に、生きながら移されて(入神という体験)、素晴らしい天界とそこに住む聖徒の至福の様子、そこで神から授かった啓示のメッセージを語ったものだからである。本書によれば、霊界には天界と地獄と、その中間帯があるという。このような入神の経験は、昔、使徒パウロが経験したと聖書に記されてあり、キリスト教史上ごく稀に偉大な聖人にのみ与えられた恩恵である。キリスト教の信者にとって、来世の存在は確実な真理であり、また、大いなる慰めである。とはいえ、来世についての疑問は、容易に答えられるものでもない。このとき、『霊界の黙示』は、そのような霊的な求めを満たしてくれるものと信じる。確かに天上の世界は地上の言葉をもっては表現できないだろうが、スンダル・シングはその不可能なことをインド精神の英知と霊眼をもって可能にしてくれた。しばし日常生活の喧噪を離れて、本書を心静かにひもといて、永遠の世界を瞑想することをお勧めしたい。
内容説明
インドの聖者が体験した生けるキリストの力と存在。東洋の精神をもってキリスト教を理解したスンダル・シング(1889~1929?)の最後の著作、講話集、アンソロジー(選集)。「キリストと共なる生活」「豊かな生命」「十字架は天である」
目次
キリストと共なる生活
豊かな生命
十字架は天である
著者等紹介
シング,スンダル[Singh,Sundar]
1889年インドのランプール生まれ。15歳でキリストに出会い、翌年托鉢行者(サドゥ)となる。インド、ネパール、チベットなどに伝道。日本、中国、アメリカ、ヨーロッパ各地を広く伝道し、チベット伝道に出かけて消息を絶つ
広岡結子[ヒロオカユウコ]
石川県生まれ。東京女子大学英米文学科卒業。翻訳家。訳書に『私は負けない』(近代文芸社・共訳)、その他『自由』(アウン・サン・スーチー著、集英社)、『インドの聖者スンダル・シング』(ミルトス)など
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