内容説明
惑星的な規模で「母」が危機にさらされている。人間であることの根拠のひとつが、いまや解体をおこしはじめているのだ。この危機を前にして二人の女性思想家が、二十世紀のフェミニズムを越えて、「母」なるものの根源に向かって、大胆な跳躍を試みた。
目次
第1部 生と聖なるもの(女性における聖なるものとは、身体を突き抜け、叫びという形を取る瞬間的反乱ではないでしょうか。この身体の多孔性とは…;現在の民主主義におけるテクノロジーの進歩は生を「管理する」ことしか目指していません。私たちは意味の「零度」にいるのです。 ほか)
第2部 聖母マリアをめぐって(女性であることが必要でした。思想を固有の生を超越した一つの生として、また、生を一つの思想として考えるために…;社会は男性原理によって対応しようとする。それに対して聖なるものは、女性原理によって抵抗しているのです。 ほか)
第3部 現代文明と身体(西洋では「グローバリゼーション」が君臨しています。この聖なるものに、私はこのうえなく不満です。聖なるものが境界を移動させることであるとすれば…;聖なるものに近づくためには、「裏に行く」こと。生の裏側に、それは死とともに横たわっています。 ほか)
第4部 生と思考の交差点(無秩序、それは啓示のとき―頭痛を起こし、血の汗を流れさせる瞬間。砂漠の空虚を、雷雨の激しさを唐突に知覚すること。;草や動物の仲間である中国の賢人は何ものも吸収しない。彼はあらゆる流れに沿って生き、ただ一つの一体性をのみ認める。 ほか)
著者等紹介
クリステヴァ,ジュリア[Kristeva,Julia]
1941年、ブルガリアのユダヤ系の家庭に生まれる。1966年、パリに出て、文学の記号論的・精神分析的研究に従事する傍ら、後に夫となる作家フィリップ・ソレルス主催の前衛的雑誌『テル・ケル』に参加。バフチーン、ソシュール、フロイト、ラカンらの読解を軸に、デカルト的主体の解体、意味の産出性、詩的言語の侵犯性、母性的原理の措定を中核とする独自のテクスト理論を提出し、ポスト構造主義の一翼を担う。著作に、【小説】『サムライたち』1990年(邦訳、1992年、西川直子訳、筑摩書房)、『老人と狼』1991年、『憑依』1996年。評論に『セメイチオケ』1969年(邦訳『記号の解体学―セメイオチケ1』1983年、中沢新一他訳、せりか書房)、(邦訳『記号の生成論―セメイオチケ2』1984年、原田邦夫訳、せりか書房)、『ことば、この未知なるもの―記号論への招待』1969年(邦訳、1983年、谷口勇、枝川昌雄訳、国文社)、『テクストとしての小説』1970年(邦訳、1985年、谷口勇訳、国文社)、『詩的言語の革命』1974年(邦訳『詩的言語の革命〈第1部〉理論的前提』、1991年、原田邦夫訳、勁草書房)、(邦訳『詩的言語の革命〈第3部〉国家と組織』、2000年、枝川昌雄、原田邦夫、松島征訳、勁草書房)、『中国の女たち』1974年(邦訳、1981年、丸山静他訳、せりか書房)、『記号の横断』1975年(邦訳、1987年、中沢新一他訳、せりか書房)、『ポリローグ』1977年(邦訳、新装版『ポリローグ』1999年、足立和浩、沢崎浩平、西川直子他訳、白水社)、『狂気の真実―精神病的テクシトの真実と真実らしさ』1979年、『恐怖の権力―〈アブジェクシオン〉試論』1980年(邦訳、1984年、枝川昌雄訳、法政大学出版局)、『愛の歴史=物語』1983年、『初めに愛があった―精神分析と信仰』1985年(邦訳、1987年、枝川昌雄訳、法政大学出版局)、『黒い太陽―抑鬱とメランコリー』1987年(邦訳、1994年、西川直子訳、せりか書房)、『外国人―我らの内なるもの』1988年(邦訳、1990年、池田和子訳、法政大学出版局)、『女の時間』訳者による編著(邦訳、1991年、棚沢直子・天野千穂子編訳、勁草書房)、『魂のあらたな病い』1993年、『彼方をめざして―ネーションとは何か』訳者による編著(邦訳、1994年、支倉寿子・木村信子編訳、せりか書房)、『プルースト―感じられる時』1994年(邦訳、1998年、中野知律訳、筑摩書房)、『反抗の意味と無意味』(『精神分析の力と限界I』)1996年、『肉的反抗』(『精神分析の力と限界II』)1997年、『ある反抗の未来』1998年、『民族の抑鬱に抗して―フィリップ・プチとの対話』1998年
クレマン,カトリーヌ[Cl´ement,Catherine]
1939年、パリ郊外のブーローニュ・ビヤンクールに生まれる。高等師範学校で哲学を専攻後、ソルボンヌ大学で哲学の教鞭をとる。その後、国立科学研究所研究員を経て、1970年以後、新聞、雑誌の書評委員、編集委員を務め、執筆活動を続ける。ジュリア・クリステヴァ、フィリップ・ソレルスらとの親交が深く、女性問題への造詣も深い。小説の他に思想、哲学に関する著書も数多く執筆している。著作に、【小説】『形成またはフロイトの生涯』1978年、『トルコ王妃』1981年、『ヴェニスのムーア人』1983年
永田共子[ナガタトモコ]
津田塾大学国際関係学科卒。明治大学大学院演劇学専攻修了。訳書には『トラヴェルス 世紀末の政治』(共訳・リブロポート)、『トラヴェルス ニッポン』(共訳・リブロポート)、『セルゲイ・パラジャーノフ』(共訳・国文社)
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