内容説明
特別なセンスや才能がなくても、小説は語ることができるし、書くことができる。創作とは、自分の中から何かを生み出すこと、何もない無の状態から作品を作り出すことではなく、過去の作品を書き換え、別のものに作り直すことだとも考えることができる。過去の作品のアイディアは、自由に読み取って、人類の「共有財産」として利用可能なのだ。本書は、五つの小説を題材にして、どのように先行作品が摂取され、新たな小説に書き換えられたのかを具体的に解き明かしながら、読むこと・書くことについて実践を交えながら考えていく。小説を論じたいがその糸口が分からない、小説を書きたいが自分のアイディアをどう形にしたらいいのか分からない。そういうあなたに向けた小説指南の書。
目次
第1章 語り手による情報のコントロールについて
第2章 小説の起源を遡る
第3章 “空所”を探しながら読む
第4章 “空所”を想像で埋めて書きかえる
第5章 連想で言葉を広げていく
小説本文の出典
読むこと・書くことについてより詳しく知るための入門書
小説について更に学びたい人のためのブックリスト
著者等紹介
桑原丈和[クワバラタケカズ]
1965年帯広市に生まれる。北海道大学・大学院在学中より近代日本文学の研究を始める。現在、近畿大学文芸学部の日本文学専攻創作・評論コースで創作についての講義・実習に携わる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐倉
6
短編小説を五編読む。そのあとにそれをどのように読むか、そこからどうやって書くかの講義と実践を提示する短編集であり創作教室。例えばある小説が描いていない『空所』を自分で見つけ出し描く。小説と小説の影響に注目してみる。作者の意図ならぬ読者の意図を持って作品をサンプリングする等々。文章を読まねば文章は書けないし、小説を読まなければ小説は書けない。これは編集者や小説家から良く聞く言葉。ではどう読めば書くことに活かせるか?という点にひとつの例を提示している。今後小説を読む時は「僕ならこうする」を考えながら読みたい。2022/11/15
藤鼠(ふじねず)
4
以前某作品で、作者Aは作者Bに影響を受け、作者Bは作者Cを尊敬し、作者Cに作者Dは批判され…というような作家同士の繋がりを見たが、なるほど、こういうことか。そして、小説とは無から生み出すものが全てではなく、むしろ広義で二次創作的に作り出されたものが多いのだと知った。時々パクリだと叩かれている作品を見かけるし、自分でもそう思ったものがあったが、本書の中にあった「面白いと思ったものを自分でも書いてみたい」というような言葉に納得。▼空所に注目したり基となった小説を考えてみたりと、小説の新たな楽しみ方を教わった。2020/01/03
kitten
4
図書館本。小説の読み方についての本だけれども、そんなもん考えないで自由に読んだらいいんじゃないかな、と私は思う。でも、いずれ小説を書こうと思っているのなら、そういう読み方も必要になるのかな?江戸川乱歩の「二銭銅貨」は初めて読んだ。並べられると、確かにポーの「黄金虫」に似てるね。太宰治が「女の決闘」を書き直すという趣向は面白かった。あえて書かないところもあるし、そこを書き直すと全然違う印象になったりする。2019/07/08
Yui
3
小説の読みを深めようと思い手に取った。小説の一節、映画のワンシーン、音楽の一小節、日常はインスピレーションの源なのだと気付かされた。その蕾を自分自身でどう解釈するか、どう広げるか、どうまとめるか、そこに小説家の個性がでるのかなあ。自分の空想も人生で一度くらい形にしてみるのも楽しいかなと思った。2023/07/17
K.C.
3
小説を書く予定はないが、読む予定はもちろんある。その前提に立つと、何か種明かし的な気持ちになったのは気のせいか。書く予定があれば、参考にもなったのだろうが。2020/02/05