内容説明
日本共和国(南日本)の情報機関所属の諜報工作員・岡田隆は、東日本で捕捉された潜伏工作員の救出のため、東西に分断された札幌へ向かった。一方、日本民主主義人民共和国(北日本)の国境警備局次官の平良忠孝は、仲間の救出のため、越境潜入した南日本の工作員に、自身の亡命を賭けようとしていた。運命の時は、国境の橋を越えて迫りつつあった…。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
hanchyan@つまりはそういうことだ
28
♪あなた〜は私の〜ほんの一部しか知らな〜い♪というわけで。王道のエスピオナージではあるが、でも正統ではないのね。それは本作の舞台が、WWⅡ敗戦後に「『南北』に分断された日本」だから。要するにエスピオナージを著すにあたって、ベルリンの壁を札幌に作っちゃったわけですよ東さんは。その、『北日本』『南日本』のめっさリアルな習俗はがちSF。んで、全ての章題が『固有名詞』なんだけど、戸籍上の氏名だったりコードネームだったらするのね。そこが興味深い。開巻からクライマックスまで徹頭徹尾、緊張・緊張(弛緩)、そして緊張。2022/04/28
マムみかん(*ほぼ一言感想*)
19
もし第二次世界大戦後、朝鮮半島のように日本が南北に分断されていたら。 かつてのベルリンのように、札幌市が東西に分裂していたら。 こんな諜報戦が日常だったかもしれないな。 登場人物たちが何度となく言っているとおり、本当に「イヤな世界」です! 東作品では異色ですが、東西冷戦時代のスパイ小説のような非情さ、苦さを堪能できました☆ 2012/08/15
Syo
14
凄いねぇ2024/02/24
hanchyan@つまりはそういうことだ
14
大好きな東さん。名無しのオレ・畝原、健三にススキノ・ハーフボイルドに幇間探偵法間にソープ嬢くるみ・・・振り替えるとけっこうシリーズあるんだが、一方でノンシリーズ一作こっきりの本作。何度読んでもシビレます。ええシビレますとも(笑)。初読時は「南北に分断された日本」て設定だけで持ってかれたが、目前の事物の描写に徹底しはなしの背景すらほとんど説明ナシの語り口はまさにカラっカラに渇いたハードボイルドながら、ときおり止めどなく滲み出る情感の血の通った熱さ。それこそが東エンタメの魅力と個人的には思う。酔う。酔います。2013/08/11
電羊齋
9
日本が東西陣営により分断された世界が舞台のスパイ小説。状況説明が極力省かれ、各登場人物の主観的視点で物語が展開するため、まるで自分自身が五里霧中のスパイ合戦の中にいるかような緊迫感があった。登場人物は主役級から脇役まで一人一人丁寧に描きこまれ、特に平良忠孝が印象的だった。また、東側陣営の「日本民主主義人民共和国」(北日本)の社会生活の描写が非常に詳細で、いわゆる「共産趣味者」の方が読めば非常に楽しめると思う。 ※読んだのは単行本の方ですが、感想登録数はこちら文庫版の方が多いので、こちらに登録しました。2015/10/11