内容説明
成吉思汗紀元838年、世界は征服者たる黄色人種と被征服者の白色人種に二分されていた。支那本土に築かれた強大な元帝国では、白人は奴隷と化していたのだ。白人シグルト・ラルセンは、圧制に喘ぐ人々が作り出し秘密結社「黒耶蘇」に身を置き、日々高まる抵抗運動の激しさを感じていた―。元帝国支配の歴史を改変すべく、シグルトは、時航機『刻駕』を駆って十四世紀の元へと旅立った!著者畢生の傑作長篇SF。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
亮人
24
モンゴル帝国が全世界を手中に収め黄色人種優位な歴史改変世界で、奴隷のように扱われている白人の一人であるシグルトがタイムマシン《刻駕》を奪って十四世紀の「元」へと向かい歴史を変えようとして時代の波にのまれてゆく、という熱いストーリイ。現代社会の白人優位主義を裏返したような設定で、人種の融和とは何かを焙り出すというテーマは、豊田有恒の真骨頂。元の歴史のうねりも、歴史小説のように手に取るように読ませる。豊田有恒の特徴が凝縮された一冊で大満足!!2013/08/16
TheWho
18
SF作家の著者が、1968年に刊行した処女長編。ユーラシア大陸を蹂躙した蒙古ことモンゴル帝国が、その後も存続しアジアのみならず欧州、日本、アメリカ大陸、アフリカ大陸迄を席巻し、黄人(黄色人種)の世界を成し遂げた架空世界で迫害せれていた白人の主人公が、タイムマシンで過去の世界に行き歴史を変えるべき奮闘する物語。単純なSF小説と思いきや重厚な歴史小説とも思える作品であった。結末は、現在の白人至上主義の世界のアンチテーゼとも思える重厚な作品であった。埋もれていた名作を発見したかとも思える一冊です。2016/10/30
Dash-Checker
17
半世紀以上前に書かれたとは思えないほど新鮮。白人が迫害されている歴史を正そうとしてタイムスリップした主人公が、徐々に元の偉人(?)や政治体系に呑み込まれていくシーンが圧巻。日本が第三次元寇で負けた後の世界史が楽しい。東部劇には笑った2023/12/27
KF
16
三度目の再読。やはり1986年の初回が一番面白く感じた。当然読書メーターに登録しておらず、二度目も登録しておらず、初読の扱い。初回の印象が良過ぎて二度目の時は「あれ?」の感覚だったが、三度目となると、「時間に関わるSFはこうなるよね」というのが強い印象。舞台がモンゴルを中心として大陸となると地名がピンと来なかったり、人物が実在か否かもわからないのでちょっと苛々したり。あとがきや解説については時代の経過もあるせいか、ピンと来ない感じもあった。更に四度目を読むかと言うと無いと思う。 それでも好きな作品です。2024/01/16
minibear
8
SFの大家、豊田有恒氏の処女長編。語彙力がなくて、申し訳ないが、ものすごい超大作である。作者のあとがきの内容には、少しついて行けない部分もあるが、世界における人種間の壮絶な争いに関しては、ここまでくるのも有りかなと、読み終わった今強く心に刻まれた。SFや歴史好きな方には、かなりオススメです。2019/03/06
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