内容説明
時代が最も大きく折れ曲がった60年代に登場し、「ぼくの眼は千の黒点に裂けてしまえ」と、鮮血のように熱く孤独な詩的シーンを疾走する詩人・吉増剛造。存在そのもの、行為そのもの、想いそのものが鮮烈な言語の体験となり、日本語のあらゆる要素を駆使することで、無限なる詩的宇宙を組み立てる。さまざまな都市や原野を移動し、ジャンルや境界を越える詩人の代表的な青春詩篇を集め、さらに写真作品やオブジェも紹介する。
目次
朝狂って
帰ろうよ
野良犬
草原へゆこう
渋谷で夜明けまで
リズムの魔に吹かれて
渚にて
狂人走れば不狂人も走る
魔の一千行
疾走詩篇〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さっとる◎
34
気体が液体を経ずに固体となる、そのエネルギーが私を薙ぎ倒して通過する。心中に渦巻く感情、直面している事態、それを端的に言葉にすることは可能である。例えば、行き詰まった、それでも進む。と言ったとして。で?それが何?内にどんな何があってなんて、わかりやすい単語では表せんのだ。「彫刻刀が、朝狂って、立ちあがる それがぼくの正義だ!」。物語を経ないで言葉にする、そこには詩が残る。こんなに強さを感じる詩集は初めて。かなしさや儚さに詩は似合うと思っていた。なんだ、戦うこともできるのか。2018/09/13
石油監査人
16
この本は、「吉増剛造詩集(河出書房新社)」、「青空」、「草書で書かれた、川」、「オシリス、石の神」から選ばれた選詩集です。吉増の詩というと、「!」を多用した疾走感あふれる作風で知られています。先鋭的な言葉の連続は、殆んど意味不明で、読み始めは、正直、嫌悪感すら覚えるのですが、勢いとリズムに慣れてくると、次第に心地良くなってきます。過激な言葉の嵐は、やがて滑稽に感じられて、最後は笑みを浮かべながら読んでいる自分に気づきます。こんな読み方で良いのだろうかと自問しながらも、確かな活力を与えてくれる詩でした。2022/06/25
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8
吉増剛造、いや、日本の現代詩を読んだことのないひとにまず読んでもらいたい本。2018/05/06
oz
7
初読。現代詩壇で最もコアな活動を続ける吉増剛造。本書は初期詩集『頭脳の塔』『草書で書かれた、川』からの選集と日記という形態で絶版の多い彼の詩集の中で最も手軽に入手できるものだ。吉増の詩は一見すると粗雑に見える。詩からは排除されるべき固有名や俗語が無整除にそこには並べ立てられている。だが美しいのだ。言葉の飾りを取り払った先に剥き出しの詩人の資質が示される。これは紛れもない一級の芸術作品なのだ。2009/09/16
まろすけ
5
著者初読み。なるほどこういう詩風か。ことばの峻烈な断崖とイメージ凝縮の濃さ、そしてなにより疾走感が凄い。イメージの濃さと量のこれでもかの氾濫。・・が、読んでてだんだんくどくなってきて疲れる。しかもそのイメージとモチーフが中2病ならぬ青年男子病というか(コアファンに絶対怒られそうな感想ですが)。第三部の方がまだ、短詩が多いのも助けとなり、40歳のいまの僕にはすっと入ってきた。が、疾走感は初期の第一部の方が上。好みは分かれそう。ただ、著者が歳を重ねても常にことばの尖端を目指している点は確かに。だれてない。2020/05/18