出版社内容情報
下町生まれの作家が、人生の折々に出会った忘れられない味。鮨、どんどん焼、天ぷら、洋食と、東京に残る「江戸前」の食物に託して人生を味わいつくす、本物の食通名エッセイ集。
内容説明
成熟は舌とともにあり。池波流「通」の嗜み。
目次
1 江戸の匂いのする情景
2 味の歳時記
3 「通」のたしなみ
4 むかしの味が食べたくなって
5 口福と幸福
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
71
食の楽しみを余すことなく、ご存じだった池波正太郎氏による、グルメエッセー。しかし、高級品ではなく、12か月の旬のものやお金がなくとも楽しめる食の楽しみと工夫、特定のものを食べる時の心意気を熱く、語る。食いしん坊は何時の世も変わらないのだな。特に茄子の描写は滑らかに滑る舌触りやほろ苦くも甘みを感じる味を想像し、唾を呑み込む。だって『雲霧仁左衛門』でも焼き茄子の御味噌汁は本当に美味しそうだったもの・・・。「どんどん焼き」の親爺さんの自嘲気味な言葉に対しての敬意が滲む筆致、資生堂の洋食やボウイさんへの憧れも素敵2021/10/21
めしいらず
59
昔はよその町へ行かなくとも、自分たちが暮らす町の中で、あらゆることが事足りた。馴染んだ人相手への商売が互いに成り立っていた。みんなが知り合い。夕刻になると大人は道に縁台を並べ語らう。子供は次々と遊びを考え出す。空には蝙蝠が飛び交い、寝間の蚊帳に放った螢の光に心和む。そして家族の気配を感じながら眠りに就く安らぎ。人々はお節介なほどに誰かを気にかけ、当たり前に助け合う。みんな貧乏だけど活気に充ち、誰もが困っていないし、誰をも羨んでいない。著者が見据えるのは、懐かしい味と共にある、家族友人たちとの懐かしい日々。2015/06/27
白黒豆黄昏ぞんび
11
粋ってのはこういうことなんだろうなあ。一人鍋いつかやってみたい。2012/10/17
kobash
10
「人間は、生まれると同時に、確実に『死』へ向かって歩みはじめる。その『死』への道程をつつがなく歩みきるために、動物は食べねばならぬ。これほどの矛盾があるだろうか。」「死ぬために生き、生きるために食べる。それはつまり、『死ぬために食べていること…』にもなる。」戦争を経験したからなのか、食べることを決しておろそかにしなかった筆者の食への姿勢に心を打たれた。2018/11/12
gtn
10
池波はいろんな著書で「どんどん焼き」のことを書いている。食パンに溶小麦粉を塗って焼き、ウスターソースをかけたパンカツをはじめ、屋台で安価に売られた粉ものだが、郷愁、人間模様も相まって、本当に旨そう。2018/06/28
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