内容説明
作家・司馬遼太郎は『坂の上の雲』で、日本人に何を伝えたかったのか―。アジア国家として初めて列強に肩を並べたという幻想、戦争の勝利に浮かれ、何も知らされていなかった国民。舞台の主人公となった正岡子規、秋山兄弟の生き様から、司馬遼太郎が伝えたかった本当の主題が見えてくる。
目次
はじめに 精魂こめた執着の名作
第1章 近代国家への仲間入り(激動・明治維新の青少年たち;太政大臣をめざして上京した正岡子規;文芸を捨て、海軍で日本一をめざす秋山真之;新しい時代の到来を告げる文明開化;海外へ目を向ける青年国家・日本;近代国家としての背筋が通った憲法制定)
第2章 初めての対外戦争となった日清戦争(世界の視線を集める極東情勢;プロシャ主義の先制攻撃から始まった日清戦争;日露戦争の戦訓となった黄海海戦;一日で攻略した“難攻不落”の旅順要塞;間に合わなかった子規の従軍)
第3章 列強と対峙する日本(臥薪嘗胆で雪辱を誓った三国干渉;「白砂糖は黒砂糖からつくられる」―秋山真之;騎兵の育ての親となった好古;青年の夢を支えた女性たち;俳句・短歌の革新に闘志を燃やした子規;日本人を「猿」と呼ぶ帝政ロシアのニコライ二世)
おわりに 作家・司馬遼太郎の仕事
著者等紹介
谷沢永一[タニザワエイイチ]
1929年大阪市生まれ。評論家。書誌学者。関西大学名誉教授。関西大学国文科大学院博士課程修了。在学中に開高健、向井敏らとともに同人誌「えんぴつ」を創刊。関西大学文学部教授を務めた後、1991年に退職。専攻の日本近代文学、書誌学の分野はもとより、該博な知識に裏打ちされた社会評論には定評がある。『完本紙つぶて』でのサントリー学藝賞をはじめ、読売文学賞(『文豪たちの大喧嘩』)、毎日書評賞(『紙つぶて自作自注最終版』)、大阪市民表彰文化功労賞、大阪文化賞など各賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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