内容説明
1920年代から48年の死に至るまで、文学作品の単なる映画化ではなく映画を軸に新聞・出版・広告を巻き込んだメディア・ミックスを仕掛け、文壇人のみならず「映画人」としてメディアに君臨した菊池寛とは何者だったのか。「映画」を通して、時代と最も鋭敏に切り結んだ菊池寛の実像を初めて描く。第7回「河上肇賞」本賞受賞作。
目次
序章 「文壇人」を超えて
第1章 女性観客と恋愛映画
第2章 恋愛映画のポリティクス―『第二の接吻』(一九二六年)
第3章 映画雑誌『映画時代』の創刊と「映画時代プロダクション」の設立
第4章 輻輳されるメディア―『東京行進曲』(一九二九年)
第5章 映画女優とスキャンダル―『美しき鷹』(一九三七年)
第6章 戦時期の菊池寛
第7章 想像された“昭和の軍神”―『西住戦車長伝』(一九四〇年)
第8章 「決戦下」の映画―『剣聖武蔵伝』(一九四四年)
第9章 映画のなかの天皇―『かくて神風は吹く』(一九四四年)
第10章 連続する映画―敗戦前後の大映作品を中心に
終章 映画人・菊池寛
著者等紹介
志村三代子[シムラミヨコ]
1969年大阪市生まれ。早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。現在、玉川大学・二松学舎大学・日本大学・明治学院大学・早稲田大学非常勤講師、早稲田大学演劇博物館招聘研究員、国際日本文化研究センター共同研究員。論文「映画人・菊池寛」により第7回河上肇賞本賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ka-ko
2
菊池寛は、小説家、文春の創立者としては知っていました。大映の社長だったとは知りませんでした。戦時中にはメディアを通して戦争協力者だったことも知りました。リベラリストの菊池は、小説家のジャンルを超えて活躍したことを知っただけでもこの本を読む価値があったと思いました。2013/10/22
rbyawa
1
i063、正直なところ一般的な文学史ではなく、菊池寛研究のほうに目を通してから文壇とのクロスオーバーに関しては推理を進めて欲しかったかな…とは思ったものの、映画に関しては本当に精密な調査があり、文学史の情報と合わさるたびにノイズになっていてだいぶ複雑…。いや、菊池寛関係は他と比べて精度高めだからなぁ。大雑把に「日本の映画の歴史」の本になっており、菊池ものの映画の散々な欠点を挙げても業界内でもかなりマシなほう、としか言い様がなく…。黎明期のわりにはペイしてるいい業界だよね…戦時映画もいちいち菊池節だわこれ。2018/09/04