出版社内容情報
自由貿易推進は、是か非か!?
世界的大ベストセラー『帝国以後』の著者、トッドの最新発言集!
「自由貿易こそ経済危機の原因だと各国指導者は認めようとしない」「ドルは雲散霧消する」「中国が一党独裁のまま大国化すれば民主主義は不要になる」――米ソ二大国の崩壊と衰退を予言したトッドは、大国化する中国と世界経済危機の行方をどう見るか?
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
テツ
20
少し前までの世界に蔓延していた「自由貿易が正義で保護主義は悪!グローバリズムを推し進めなければならない!」的な空気に対しての警鐘。最近はわりと否定的な立場も増えて、どうやらグローバリズムな世界というものは絶対的な正義と幸福に満ち溢れてはいないらしいぞということがぼくたち一般民衆にもぼんやりと理解され始めたけれど、本書が書かれたのは2010年ということに驚く。誰かが広めようとする新たなシステム、新たな秩序を疑いの目でキッチリ精査するというのは大切なことだなあ。2020/01/30
とよぽん
20
経済学者かと思っていたら、違う。歴史人口学、聞き慣れない分野の研究者。ソ連が崩壊することを、25歳のときに、根拠をもって論じていたそうだ。タイトルが「風が吹けば桶屋が儲かる」的に響き、「え?」だった。しかし、講演の記録で読みやすく、話の筋がすっきりしていて分かりやすかった。経済が政治を圧倒するなんて! そして、世界中の指導者が、まだアメリカ依存型の発想から抜けられないという現実に、危機感を感じた。それにしても、何と冷静な分析をする学者なのだろう‼2017/10/09
壱萬参仟縁
20
自由貿易の自由が、実は、不自由な格差社会や、不自由な生活水準の低下をもたらしている(14ページ)。著者は、「ウルトラ・リベラリズム」が今日の、常軌を逸した自由であるという(59ページ)。真の自由とは程遠い。資本社会主義という造語は、国家が資本に奉仕する、という面白い概念に思った(85ページ)。昔、「国家独占資本主義」という言葉があったので、これとの違いに興味を抱いた。また調べてみたい。多くの論者もトッドから感化されたことを書き連ねており、日本の格差社会をどう変革し、被災地復興と共に、家族の復権を考えた。2012/10/17
yooou
10
☆☆☆☆★ エマニュエル・トッド初挑戦でしたが、とても読みやすい、そして刺激的で非常に啓蒙的。これはこの人の本をもっと腰をすえてじっくり読んでいく必要があると強く感じました。そしてこうした人の本を読み、またご本人を招聘して面と向かって対話ができる人たちが日本にもちゃんといるという面ですごく安心感を覚える内容になっておりました。僕らも「帝国以後」備えるべく準備を怠らないようにしていかねばと思いました。2012/04/18
デューク
6
自由貿易⇒世界規模での企業の賃下げ競争⇒内需減少⇒産業衰退、という恐ろしく単純で、恐ろしく危機的なグローバル経済に警鐘を鳴らす一冊。給料の総額が内需と等しい以上、給料が下がれば内需は減少し、国内産業は衰退するのはよく考えてみれば当たり前。そんな「よく考えてみれば当たり前」な視点に気づかせてくれる。 「合成の誤謬」という言葉があるが、個々の企業にとっては合理的でも、世界経済全体を考えれば悲劇的な選択はいくらでもあるだろう。 一段上から経済を学べる一冊。お勧め。2014/03/25