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内容説明
16世紀、イタリア出身ながら海賊に捕われイスラムに改宗、レパントの海戦を生き延びて海軍提督に登り詰めたクルチ・アリ。宗教の境界を越え破天荒の活躍をした異色の存在の数奇な生涯を描く、トルコ現代文学の話題作。
著者等紹介
ギュルメン,オスマン・ネジミ[ギュルメン,オスマンネジミ][G¨urmen,Osman Necmi]
1927年トルコ・イスタンブル生。幼時よりフランス人の乳母にフランス語を習い、後にイスタンブルのフランス系私立学校セントジョセフ校に学ぶ。1946年より52年までフランスに留学後、トルコに戻り、ウルファで政治活動に従事したのち、再びトルコを離れパリに移る。以後その地に留まり、トルコ語・フランス語の2か国語で執筆を続けている
和久井路子[ワクイミチコ]
横浜生まれ。アンカラ在住。フェリス女学院を経て、東京大学文学部言語学科卒業。同大学院修士課程修了(言語学・トルコ語学)。リハイ大学(アメリカ)で博士号取得(外国語教育)。現在、中東工科大学(アンカラ)現代諸語学科に勤務(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
em
13
16世紀、スレイマン大帝からムラト三世まで三代の皇帝を見たクルチ・アリ。長大な河の底にきらめく数粒の、小さく光る何かを探していた。最後まで読んでようやくそれに気づく、そんな読書。何かを見出したかもしれないと思ったのも束の間、物語の終わった場所に立ち尽くすような物哀しさ。最近読んだ中で最もスレイマンに手厳しく、これがトルコの作品であることに戸惑い、考えさせられました。冒頭にユルスナールの引用があるのでなおさら。”残虐非道なトルコ”のイメージを押し付けたのも、勝手に脱却しようとしたのも西洋なのだということ。2017/10/25
人生ゴルディアス
2
16世紀半ば、信仰と利益が入り乱れる地中海で、子供の頃キリスト教の修道院に勉強をしに行く途中海賊に襲われ、トルコのガレー船の漕ぎてになって出世して、最後はトルコ海軍の提督にまでなったクルチ・アリの物語。あらすじは波乱万丈な感じで面白そうなのになあ!と言うのが感想。とにかく長い! そして原文も悪いのかもしれないが、翻訳がひどい! あと、この本そのものも、物語の書き方としてはお粗末すぎる。著者は歴史書ではなく「人物の心の動きを描きたかった」らしいが、うまくいっているとはとても思えない。2015/12/28
ヴィクトリー
2
主人公、語り手を含めて、オスマン海軍≒海賊の人々には多くのキリスト教からの改宗者が含まれ、また、ユダヤ人も登場する。 こういったオスマン帝国の有り様は、民族主義(そもそもオスマン帝国下の諸民族を離脱させるために西洋諸国がそれを煽ってきた)や宗教紛争が絶えない現在の状況の解決法へのヒントを含んでいる気がする。 時計の針を逆に回せないのは承知しているが、民族や宗教が、それらが異なる人々と命を奪い合うほどの絶対的な価値ではなかった時代・国があった、ということを思い出すだけでも幾分かの効果はあるかもしれない。2010/04/28
ての字
1
この小説が扱うオスマン帝国時代の醍醐味の一つは登場人物の出自の多様さにある。自ら志願したのではないとはいえ、欧州の固定的な階級社会には想像もつかない己の技量で身を立てる機会もあれば縁故が薄いゆえの危機もある。守っているはずの陸上からやってくる陰険な妨害をかわすうちに海上の敵との間にある種の共感を持つにいたり、海上で生きる自由さと成り上がり者の孤独さが浮き上がってくる。一人の提督の生涯を通じてこの時代の空気をも感じることができる読み応えのある小説。2012/01/12
えるもん
0
正直、全編に渡って、暗い雰囲気が漂っていて読みづらかったです。 あと、クルチ・アリの綽名の『ファルタース』なのですが、この本では『禿』という意味になってました。『壊血病提督』という意味だと思っていたのですが…。2014/02/12